世界遺産の富岡製糸場には、鉄道で、しかも「上信電鉄」で行くべきだ:杉山淳一の時事日想(3/4 ページ)
「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界遺産登録が決まった。ただ、いくつか課題はある。ぜひ鉄道で、しかも「上信電鉄」でと勧めたい理由は何か。鉄道とバスを連携させた周遊ルートの整備を急ぐべき理由も考察した。
上信電鉄も世界遺産クラスの価値がある
富岡製糸場へのアクセスとして、上信電鉄をオススメする理由は「クルマより便利だから」だけではない。富岡製糸場と上信電鉄には深い縁があり、合わせて訪問するほうが有意義だからである。富岡製糸場で生産した生糸を出荷した鉄道路線が上野鉄道、現在の上信電鉄だ。
富岡製糸場は明治5年(1872年)に創業した。明治5年と言えば、新橋と横浜の間で鉄道が開業した年。これをきっかけに日本では鉄道建設の気運が高まっていく。日本鉄道が現在の高崎線を高崎駅へ延伸した年が明治17年(1884)だ。この高崎駅を起点とし、富岡、下仁田を結ぶ路線は1897年に開通した。これが現在の上信電鉄だ。当時は上野鉄道といった。上信電鉄という社名に変わった理由は、電化して以降、長野県佐久へ延伸する野望があったからである。残念ながらそれは実現しなかった。
その上野鉄道の遺跡も上信電鉄沿線にある。「ぐんま絹遺産」(関連リンク参照)というサイトによると、「旧上野鉄道関連施設 鬼ヶ沢橋梁」と「旧上野鉄道関連施設 下仁田倉庫」が紹介されている。
「富岡製糸場と絹産業遺産群」に指定された地区は、富岡製糸場のほかに「田島弥平旧宅」「高山社跡」「荒船風穴」の3カ所。ただ、それ以外にもこの地域には歴史や産業を示す建物などが多い。数日で巡りきれないほどの数になるから、自身の興味と関連づけて選びたい。鉄道好きなら、上に挙げた二つは見ておきたい。
上信電鉄やJR東日本の宣伝をするわけではないけれど、日本の生糸産業とその輸出については、鉄道の役割も大きかった。東京から鉄道が富岡製糸場を訪問するというコースは、海外に輸出された生糸の道をたどる旅になる。鉄道こそ富岡製糸場にふさわしい訪問手段だ。
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