ブルーシールアイスクリームのブランド戦略から、カスタマーバリューを考える:INSIGHT NOW!(2/2 ページ)
沖縄が誇るアイスクリームブランド、ブルーシールアイスクリームを事例にカスタマーバリューについて考えてみた。一時はフランチャイズを使った拡大戦略を採っていたらしいが、ブランド価値の観点では、あくまで沖縄を中心に出店したほうがいいだろう。
私は、営業やマーケティングの講義で「モノコト変換」思考というコンテンツを中心に据えている。ここで言う“コト”とは、マーケティング用語では便益とか、CVP(カスタマーバリュープロポジション)などと呼ばれる、いわゆる商品が持つ価値のことだが、私はシンプルにコトと表現している。
例として、一般的なアイスクリームを「モノコト変換」してみよう。
“モノ”としてのアイスクリームを手に入れる人が欲しいコトとは、「甘さ・冷たさから派生する快感」である。むろん、栄養摂取や一緒に過ごす人との楽しい時間というコトでも構わない。要するに、人はモノを欲しがるのではなくコトを欲している。そのコトに埋め込まれたストーリーを買うのだ。
では、ブルーシールアイスクリームはどうだろうか。もちろん、売っている商品はアイスクリームだから「甘さ・冷たさから派生する快感」を求める点は、一般のアイスと同様だが、沖縄に旅行で来る客がブルーシールアイスクリームに求めるのはそれだけではない。日常から離れ、沖縄にやってきた喜びに派生する「非日常感」だと思う。
従って、サーティーワンアイスクリームのように、あちこちに店舗を構える戦略には違和感を感じる。できれば「非日常感のある喜び」にテーマを絞って、出店戦略やブランド管理をしてほしいと切に思う。
私のように、たまにしか沖縄に行かない人間でも、ブルーシールアイスクリームを沖縄ブランドとして想起できる。そして、何となく嬉々とした気持ちと高揚感に満たされるのだ。この感覚こそが、ブルーシールアイスクリームのブランドが提供する価値であり“コト”である。このコトにマッチした戦略を貫くことで、高利益の体質を生み出せるのではないか。非日常の価値には、財布のヒモが緩みやすいのが人間の性なのだから。
同社は現在創業66年とのこと。ブランドを大切にし、ぜひ100年企業を目指して頂きたい。(小倉正嗣)
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