連載
なぜ住基ネットに採用されたのか 「手のひら静脈認証」の実力:松岡功の時事日想(3/4 ページ)
住基ネットを参照する職員の認証にどんなシステムが使われているかご存じだろうか。「手のひら静脈認証装置」が7月から本格導入された。生体認証方式はいくつかあるが、なぜ手のひら静脈認証か、装置を納入したキーパーソンにその決め手を聞いた。
「手のひら静脈認証」、3つの特長
果たして手のひら静脈認証の効果はどれほどのものか。若林氏はその特長として「安全性」「認証精度」「受容性」の3つを挙げた。まず安全性について。静脈は生体認証の中でも偽造が困難であること。住基ネット向けとしてもここが採用の大きな決め手になった。
同じ静脈認証でも、手のひらは指や手の甲による方式と比べて静脈パターンが複雑ながらも安定している。本人と認識されない「本人拒否率」で0.01%、他人が誤認されてしまう「他人受入率」は0.00008%以下という高い精度を実現する。これが高い信頼を望むセキュリティのベースになる。
受容性については、生体認証として先行してきた指紋認証との比較が分かりやすい。指紋認証は身の回りでも比較的身近になっている方法だが、表面の(指紋の)摩耗や乾燥など体表の外的な要因を受けやすい。一方、非接触型の手のひら静脈認証であれば、体表の影響をほとんど受けないメリットがある。また非接触のため、衛生的で、かつ簡単な操作で済むため、ほとんどの人が抵抗感なく使えるという。
上の図は、富士通が示した生体認証方式の認証精度と適用分野を表したものである。静脈ではない認証技術を推進している企業などはそれぞれの位置付けについて異論があるかもしれないが、大まかなポイントを捉えるうえで理解しやすいので参考にしていただきたい。
関連記事
- 富士通、静脈認証対応の企業向け12.5型タブレットなど計10機種を発表
富士通は、企業向けタブレット/デスクトップPCなど計10機種を発表した。同社初となるゼロクライアントモデルなども用意される。 - 富士通、世界初の静脈認証センサー搭載タブレット端末を「ふくおかフィナンシャルグループ」が導入
富士通は、ふくおかフィナンシャルグループの渉外活動用端末として、不正使用を防止できる静脈認証センサーを搭載したタブレット端末を提供する - 手のひら静脈認証できるマウス 富士通が世界初
- 電子マネー“以外”に広がるFeliCaソリューション
電子マネーとしての利用イメージが先行しているモバイルFeliCaだが、静脈認証と組み合わせた個人認証用途、モバイルコマースのポータルとして利用するなど、新しい使い方が提案されている。 - 手のひらと指に“脈”あり──生体認証ビジネスめぐり火花
富士通が小型の手のひら静脈認証装置を発売し、今後3年間で売り上げ800億円の事業に育てる計画を明らかにした。指静脈認証を展開する日立も3年間で1000億円を目指しており、両社の競争が活発化しそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.