なぜ住基ネットに採用されたのか 「手のひら静脈認証」の実力:松岡功の時事日想(4/4 ページ)
住基ネットを参照する職員の認証にどんなシステムが使われているかご存じだろうか。「手のひら静脈認証装置」が7月から本格導入された。生体認証方式はいくつかあるが、なぜ手のひら静脈認証か、装置を納入したキーパーソンにその決め手を聞いた。
「手のひら静脈認証」で、新しいビジネスモデルが出まれる可能性
若林氏によると、生体認証市場は国内・海外ともに右肩上がりで成長している。富士経済「2013年セキュリティ関連市場の将来展望」のバイオメトリクス国内市場調査によると、国内では2011年度以降、台数ベースで静脈認証が指紋認証を抜いて最大規模になった。
そうした中で、富士通は非接触型手のひら静脈認証装置を2005年からグローバルに推進している。これまでに累計35万台を出荷し、5000万人を超える利用実績がある。2014年現在、グローバルにおける静脈認証の約8割は、同社の手のひら静脈認証だという。
その用途も、PC(業務端末)でのログオンのほか、ATM(現金自動預け払い機)や入退室管理など、高度なセキュリティを求めるさまざまな社会システムに広がっている。適用分野も、公共施設や金融業種をはじめ、あらゆる業種に、特に採用企業の従業員向け以外に、登録をもとにした一般ユーザー向けにも適用範囲が広がっている。例えば、銀行のATM、図書館における貸し出し業務、病院での患者認証といった事例が身近だろう。
注目したいのは、多くの利用形態でこれまで使用していたICカードが不要になることだ。これは利用者にとって、利便性の向上につながる喜ばしい話である。若林氏も「手軽で信頼性の高い手のひら静脈認証を使用することで、最大の目的であるセキュリティをしっかり担保しながら、実は利便性も向上できる(もっと簡単に使えるようになる)。ここは今後、もっと生かす余地がある」と話す。
そうしたセキュリティと利便性の両面を追求するうえでも、認証センサーの小型化を一層進める必要がある。ちなみに、同社の手のひら静脈認証センサーはこの10年でおよそ35分の1のサイズに小型化し、2014年現在、タブレットに標準装備できるまでになった(法人向けタブレット「ARROWS Tab Q704/PV」)。同氏は「今後さらに用途を広げるため、スマートフォンやウェアラブル端末にも装備できるサイズにしていきたい」と、引き続き小型化を推進する構えだ。
そうなれば、果たしてどんな新しいビジネスモデルが考えられるか。大きな可能性があるような気がする。それを感じさせるのも、手のひら静脈認証の実力だろう。
関連記事
- 富士通、静脈認証対応の企業向け12.5型タブレットなど計10機種を発表
富士通は、企業向けタブレット/デスクトップPCなど計10機種を発表した。同社初となるゼロクライアントモデルなども用意される。 - 富士通、世界初の静脈認証センサー搭載タブレット端末を「ふくおかフィナンシャルグループ」が導入
富士通は、ふくおかフィナンシャルグループの渉外活動用端末として、不正使用を防止できる静脈認証センサーを搭載したタブレット端末を提供する - 手のひら静脈認証できるマウス 富士通が世界初
- 電子マネー“以外”に広がるFeliCaソリューション
電子マネーとしての利用イメージが先行しているモバイルFeliCaだが、静脈認証と組み合わせた個人認証用途、モバイルコマースのポータルとして利用するなど、新しい使い方が提案されている。 - 手のひらと指に“脈”あり──生体認証ビジネスめぐり火花
富士通が小型の手のひら静脈認証装置を発売し、今後3年間で売り上げ800億円の事業に育てる計画を明らかにした。指静脈認証を展開する日立も3年間で1000億円を目指しており、両社の競争が活発化しそうだ。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.