あなたの会社で“残業ゼロ”と“業績アップ”を両立させる方法:INSIGHT NOW!(1/2 ページ)
何の工夫もなしに、安倍政権が掲げる「残業代ゼロ」政策を実施すれば、日本全体では晩婚少子化、企業では従業員の士気が低下する可能性が高い。賢い企業経営者なら、対象者を中心に仕事のやり方を見直させ、残業ゼロを目指す方法を選んでほしい。
著者プロフィール:日沖博道(ひおき・ひろみち)
パスファインダーズ社長。25年にわたる戦略・業務・ITコンサルティングの経験と実績を基に「空回りしない」業務改革/IT改革を支援。アビームコンサルティング、日本ユニシス、アーサー・D・リトル、松下電送出身。一橋大学経済学部卒。日本工業大学 専門職大学院(MOTコース)客員教授(2008年〜)。今季講座:「ビジネスモデル開発とリエンジニアリング」。
安倍政権の掲げる「雇用と労働の規制緩和」という政策パッケージのうち、「労働時間規制の適用除外」は副作用がはたらく可能性が高い劇薬だ、という話を先日書いた(参考記事)。
労働時間規制の適用除外とは“残業代ゼロ”の対象を、年収が1000万円を超える社員のほか、労働組合との合意で認められた社員に広げることを検討するものだ(いずれも本人の同意が必要)。
私は残業代ゼロの主なターゲットとなるのは30代の中堅サラリーマンであり、上司と経営者は彼らに今以上に仕事を割り振る可能性が高いと考えている。結果として、彼らは今以上に残業や休日出勤を余儀なくされ、子育てに協力する時間が減り、晩婚少子化がさらに進展しかねない、という懸念があるのだ。
最悪のシナリオを避けるにはどうすれば?
この懸念が現実になるには2つの条件がある。1つは残業代ゼロの対象がじわりじわりと拡大していくことだ。これは歴代の保守系政権や産業界の動きからして、ほぼ堅いと考えている。現状では全労働者の数%しか対象にならないはずだが、産業界のエライ方々は「最低でも10%以上が対象になるようにして欲しい」と言い始めている。
もう1つは、個々の企業では「上司と経営者が」「従来の仕事の方法を変えることなく」「30代の中堅に今以上に仕事を割り振る」という目先だけを見た行動に出ることだ。残念ながら、大多数の企業においてはこの予想は当たると思う。だが、短期的には人件費カットが可能になるとはいえ、労働意欲と士気は確実に下がるため、本当に優れた経営者は違うアプローチを採ってくれるのではと、私は期待を捨てていない。
こうした最悪のシナリオを回避するにはどうするべきか。最も現実的なのは、先の条件のうち「従来の仕事のやり方を変えることなく」という部分を変えることだろう。すなわち、従業員の一部でも“残業代ゼロ方式”を適用するならば、彼らが本当に残業をほぼしなくても済むように、経営者自ら音頭をとって仕事の方法を根本的に変えるのだ。
見かけ上は“残業ゼロ”を達成しながらも、実はサービス残業に形を変えただけというケースも、近年の日本企業にはよく見られた。業績悪化に伴い、残業代の削減が目的となった企業に多かったようだが、ある時間になるとフロアの灯りを人事総務部門の人が強制的に消して回り、隠れ残業者がいないかチェックするというものだった。
しかし、その実態は単に自宅に仕事を持ち帰らせるだけ。そもそもこうした会社の多くは、当時は不景気で仕事が減っていたから可能だっただけで、その後の景気回復と人手不足で仕事が回らなくなり、今では廃止したという。
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