あなたの会社で“残業ゼロ”と“業績アップ”を両立させる方法:INSIGHT NOW!(2/2 ページ)
何の工夫もなしに、安倍政権が掲げる「残業代ゼロ」政策を実施すれば、日本全体では晩婚少子化、企業では従業員の士気が低下する可能性が高い。賢い企業経営者なら、対象者を中心に仕事のやり方を見直させ、残業ゼロを目指す方法を選んでほしい。
“残業ゼロ”と正面から向き合う
一方で、世の中には業績を上げながら“残業ゼロ”を実現した会社もちゃんとある。彼らのノウハウを参考にし、可能な部分は真似するのは有意義だろう。私も手伝った経験が何度かあるため断言できるが、業績を上げながら残業ゼロを実現するには、精神論ではなく真っ当な業務改革のアプローチと、ちょっとしたコツがあるのだ。
まず、「全社一律に残業カット」といった号令をかけるだけではダメだ。職場ごと、できれば職種ごとに業務活動を分析をすることから始めたい(業務の切り方にもコツがある)。それにより、どういった仕事にどれほど時間を費やすのかが“見える化”される。
次に大きく時間を取られている業務から順に「こんなに時間をかける価値があるのか」「なぜこんなに時間がかかるのか」「どうしたらもっと短時間に済ませられるか」といった疑問をぶつけ、理詰めで検討していく。その際に有効なキーワードは次の5つ。廃止、簡素化、IT化、外部化、平準化だ。
他部門との関わりがキーになる業務の場合は、業務フローを描いて検討することが有効だ。1人1人に考えさせるよりもグループで考えたほうがよい知恵が出ることが多く、ファシリテーターを担う人がいるほうが、よいアイディアに早く到達できる傾向がある。
確かにこうしたアプローチは一朝一夕でできるわけではなく、手間がかかるので面倒くさがる経営者は多いだろう。彼らの言い分は「当社はすでに十分効率的になっているので、今さらそんなことをやっても大した効果が出るとは思えない」といったものだ。しかし、それは言い訳に過ぎない。
実際に分析してみると、つい最近に実施したというケースでもない限り、どんな会社でも業務の無駄や非効率な方法が毎年蓄積、肥大化しており、意外と大きな効果が出る。
会社全体の残業代が大きく減り(その分を給与に回せるはずだ)、従業員のQOL(Quality Of Life、生活の質)向上、ひいては組織活性化と両立できるのだから、やってみて損はない。賢い企業経営者ならぜひ、こちらのアプローチを検討していただきたい。
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