道路老朽化への対策、今後のカギは「住民ボランティア」と「ICT」:INSIGHT NOW!(1/3 ページ)
日本の道路インフラは老朽化が急速に進んでいます。道路インフラの維持管理コストの抑制が不可欠ですが、それを実現するためには、住民ボランティアとICTを活用した点検の効率化が必要になるでしょう。
著者プロフィール:日沖博道(ひおき・ひろみち)
パスファインダーズ社長。25年にわたる戦略・業務・ITコンサルティングの経験と実績を基に「空回りしない」業務改革/IT改革を支援。アビームコンサルティング、日本ユニシス、アーサー・D・リトル、松下電送出身。一橋大学経済学部卒。日本工業大学 専門職大学院(MOTコース)客員教授(2008年〜)。今季講座:「ビジネスモデル開発とリエンジニアリング」。
長きにわたって、建設ばかりに目が向いていた道路、橋、トンネルなどの道路インフラはこれから本格的な老朽化と改修の時期を迎えます。人手不足などから、道路インフラの維持管理コストが急上昇しているうえ、一般道路に対し管理責任のある地方自治体に道路専門家が少なく、実質的に放置されている状況です。老朽化によって、通行規制になる道路が急増させないためには、これからの道路予算は新設よりも維持管理に優先的に振り向けるべきだと考えています。
しかし、それだけでは不十分です。あまりに長大な道路を日本全国に張り巡らせたことで、道路インフラの維持管理にかかる手間とコストが膨らむことは明白です。政府も数年前から対策を検討しています(参考リンク:国土交通白書2012)。維持管理コストの抑制を実現する方法の検討や開発が不可欠なのです。
民間委託は有効な手段ではない
実現しにくいものではありますが、本来最も効果が高いのは、維持管理すべき対象を絞ること。つまり、人口縮小に合わせて居住区の集約を図り、使わなくてすむ道路は閉鎖するのです。
民間であればよくある“リストラ策”ですが、公共の施設に関しては、よほど胆力のある政治家がいるか、自治体が破たんしてほかに選択肢がないか――いずれにせよ、簡単に進む話ではありません。市民○○センターなどといった公共の建物であれば、維持する予算がないからと開き直って閉鎖することもあるようですが、道路や橋は生活インフラです。それを使う住人がいる限り、閉鎖するのは最後の手段でしょう。
こうした議論になると「民間委託すれば?」という意見がよく出てきます。実は道路の維持管理における、具体的諸業務の大半はすでに民間会社に委託されています。ここで意味するのは「包括的民間委託」、すなわち道路の管理をまるごと民間に任せてインフラ維持をしてもらうことです。しかし、これでは道路を有料化して収益でまかなうことになります。それができる区間は日本全国でも非常に限られており、ましてや大半の一般道路では使えません。
となれば、現実的な手段は限られてきます。私は地域住民によるボランティア活動と、ICT(情報通信技術)による徹底した効率化ぐらいしか有力な手段はないと考えています。
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