道路老朽化への対策、今後のカギは「住民ボランティア」と「ICT」:INSIGHT NOW!(2/3 ページ)
日本の道路インフラは老朽化が急速に進んでいます。道路インフラの維持管理コストの抑制が不可欠ですが、それを実現するためには、住民ボランティアとICTを活用した点検の効率化が必要になるでしょう。
ボランティア活動とICTをインフラ維持に活用せよ
地域住民によるボランティアとは、掃除や簡単な修理など、できることは地域住民が自ら行うというものです。地域の寄り合い所や鉄道駅舎、公園といった公共インフラの維持管理において、すでに一部の自治体で実施されている手段で、ある程度の有効性が認められています。
老朽化が進んで壊れかけている、標識などが破損しているなど、問題がある部分をスマートフォンで撮り、画像データを役所に送って知らせてくれるだけでも大いに助かるわけです。ボストンでは“Citizens Connect”の名称で、2009年から導入されている仕組みですが、その有用性に惹かれ、今やマサチューセッツ州の他の市・町に広がっているそうです(参考リンク)。
もう1つはより専門的な対策です。補修する施設の優先順位を判断するためには、施設の状況を定期的に点検する必要があります。その方法は、国交省などにより定められており、従来は主に目視や打診によるものでしたが、これをICTによりハイテク化する方法があります。
すでに保守車両に搭載した専用機器で路面状態を撮影し、その画像データを解析するシステムが、道路建設や測量関係の民間業者各社から出ています。走行しながら道路を打診する専用車もあれば、道路において陥没の恐れがある箇所を、内部を破壊することなく診断する技術も進歩しており、さすがハイテクの国・ニッポンと感心します。
特に崩落時に起こる問題が大きい、橋やトンネルの老朽化を早期に把握する手法の開発、確立が早急に求められています(日本では2012年に起きた、笹子トンネルでのパネル崩落事故の衝撃が大きかったようです)。
例えば、省電力型のセンサーを橋にたくさん設置することで、老朽化の進行を自動的にモニタリングする仕組みや、非破壊で内部構造を診断できる中性子など、光量子技術の研究や実証実験が進んでいます。そして計測されたデータの収集、解析にも民間のICT技術への期待が大きいところです。
もちろん難点もあります。範囲が限定される高速道路には有効ですが、一般道路だと対象が広過ぎて効率的ではありません。画像データを収集するために保守車両を日常的に走らせる人件費やガソリン代がかさみますし、そもそも、高価な専用の測定機器やシミュレーション・管理システムを導入する余裕は、普通の地方自治体にないでしょう。
むしろ、住民からの通報を活発化する、通報があった箇所をより効率的に突き止める、といった部分での工夫を組み合わせることが求められます。その上で、入手可能な範囲でICTをうまく活用するのが現実的です。
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