厚労省はなぜ今、派遣法を改正しようとしているのか?:「3年ルール」撤廃へ(3/4 ページ)
派遣社員の働き方が変わる――労働者派遣法を改正する動きがあるのをご存じだろうか。なぜ派遣法を改正するのか、改正が行われるとどういった影響があるのか。エンジニア派遣大手であるVSNの川崎健一郎社長に、改正法案のポイントを解説してもらった。
派遣法の改正案が実現したら何が変わる?
川崎: 改正法案では、まず一般派遣と特定派遣という区分をなくし、すべての派遣事業者を許可制に変えます。今まで特定派遣だけを行っていた派遣事業者は、厚生労働大臣の許可を受ける必要が出てくるのです。
また、先ほど話した「専門的な28業務において、派遣可能期間が無期限になる」というルールもなくなります。よって原則として、派遣で同じ人に働いてもらえるのは3年までとなります。
――扱う業務を変えてもダメなのですか?
川崎: そうです。よって、同じ人に引き続き働いてほしい場合は、派遣先の会社が正社員として雇うか、派遣事業者が正社員として雇うという2通りしかありません。「3年で替わってほしくないなら、正社員として雇ってください」ということですね。
この「派遣事業者と無期雇用契約(正社員)を結んでいれば、派遣先でも無期限で働ける(=3年という上限がなくなる)」というのも改正法案で新しく制定された事項です。国としては、派遣先か派遣事業者のどちらにせよ、正社員としての雇用を促進する狙いがあります。
一方で雇用者としては、人が交代すれば同じポジションをずっと派遣社員が対応できるようにもなりました。なので、派遣事業者と雇用者についてはビジネススタイルの選択が迫られると思います。
――どういうことですか?
川崎: 同じ人にずっと働いてもらうか、人を交代してもらうかという選択によって、派遣事業者と派遣先の企業は向かう方向が変わってきます。
しかし、もし3年という派遣期間の上限を超えて、同じ人に業務を続けて欲しいのなら、 派遣事業者か派遣先のどちらかが派遣社員を正社員として雇う必要があります。派遣先の企業がその人を正社員として雇う方法もありますが、もともと正社員として雇用している派遣事業者を選べば、派遣期間の上限を気にしなくてよくなる。ですから、積極的に正社員として雇用している派遣事業者に人気が集まるかもしれません。
一方で人を交代していく方法についてですが、雇用者としては、今までよりもやりやすくなりました。もちろん、このどちらが良い悪いという問題ではなく、あくまでどちらを選択するかという話です。
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