どうする? 近い未来、学校は若い教師でいっぱいに:日本の公教育の実情と現場教師の本音(1/2 ページ)
これから5年も経つと、団塊世代の教師が一斉に退職する。その後は少ないベテラン・中堅教師と多くの若手が学校を構成し、教育現場は、経験したことのない課題に直面する。今回は、教員の年齢構成および、離職者数とその理由について考えてみよう。
公立学校における本務教員の年齢構成
文科省が、公立学校の年代別教員数を公表しました。これは、注目すべき統計情報です。5年も経つと、団塊の世代の教師が大量に退職し、少ないベテラン・中堅教師と新規採用間もないたくさんの若手教師が学校を構成します。これから5年、10年後――、自分がどのポジションにいて教育現場がどうなっていて、何をなすべきか? 学校、そして教師は、今まで経験したことのない課題に直面することになります。
例えば、小学校。上のグラフをご覧ください。5年も経てば経験と知恵をもつベテランや中堅はかなり少なくなり、職員の構成は若手中心となります。結果として、20代の若手教師が、現場の実務を積極的にまわしていかねばならない時代が間違いなく来ます。
このメンバーで、複雑かつ増え続ける教育に関する諸問題や課題に立ち向かっていくことになります。中学校や高校も、同じ傾向が見られます。
教師の離職者数とその理由
上の表は、教師の離職者数とその理由です。理由が病気であるものの、半分は精神疾患です。教師の精神疾患者の比率は、一般のサラリーマンの2倍とも3倍とも言われています。
病気を患いながら、薬を飲みながら働いている教師はこの何倍、あるいは何十倍でしょうか? 根拠はありませんが、私が現場にいて感じる限りでは、相当数いるのではないかと思われます。日本の学校は、人、金、時間のリソースが非常に少なく、もう何も入らない飽和状態にあります。
教育にかける予算の割合はOECD(※)の比較可能な国中最低という調査結果もあります。教育にかける予算の割合が減り続けている自治体も少なくないように思います。教師の給料は業務が多岐に渡るにもかかわらず、主要国に比べて安く、学校現場の負荷が大きすぎます。
教師を目指す優秀な人材は少なく、結果として教育の質は低下するでしょう。事実、教員採用試験の受験者数は減少傾向にあり、2014年は、首都圏では競争倍率がたったの2倍ほどだったそうです。管理職のなり手もないと聞きます。要するに、割に合わないということです。断っておきますが、これは定員割れの高校や大学の話ではありません。
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