どうする? 近い未来、学校は若い教師でいっぱいに:日本の公教育の実情と現場教師の本音(2/2 ページ)
これから5年も経つと、団塊世代の教師が一斉に退職する。その後は少ないベテラン・中堅教師と多くの若手が学校を構成し、教育現場は、経験したことのない課題に直面する。今回は、教員の年齢構成および、離職者数とその理由について考えてみよう。
これまでの教育のままでは、国を支えきれない
日本は教育にはあまりお金をかけず、学校は講義型の一斉指導で社会が求める人材を効率的に育てることを要求されていました。それはそれで素晴らしい成果をあげてきたのは事実です。
しかし、時代は変わりました。「知識基盤社会」などと言われ、子どもたちが食べていくには、知識量だけでなく混沌とした新しい時代に対応する、知恵を合わせて協働する力が必要となり、教育の目標や内容も変わらなくてはなりません。今以上に「少子高齢化社会」となり、これまでのような稼ぎ方では国を支えきれなくなるでしょう。
大人にも同じことが言えます。老後の年金などアテになりません。少なくとも、私は全くアテにしていません。これ以上、子どもたちにツケを払わせる訳にはいきませんので、定年後も体が動かなくなるまで生き生きと働く覚悟です。
これまでのような一斉指導中心の学校の授業は、限界を向かえます。子どもたちがチームとなって主体的に学び合い知識を獲得し、協働的に課題を解決していくような形を取り入れていくようになるでしょう。
授業、あるいは学級、学校の経営改善に、本気で舵を切る勇気が必要です。行政はそれを全力で支える覚悟をしなければなりません。「報告書を出せ」「リスクを潰せ」と、トップダウンで命令している場合ではないのです。
今、何をするべきか?
一方、学校では、若手中心のチーム構成で、少ないベテランと中堅がいかにリーダーとしての意識を高くもって成長し続け、マネジメントし、成果をあげていくかが強く問われるでしょう。見当もつかないまま、自分のことだけやって授業は従来通り――では、通用しません。若手も、甘えている猶予はありません。
20代のうちに、従来有力なベテランや中堅が担っていた重要な校務を任され、学校全体に貢献していかねばならないようになるでしょう。それぞれの年代層が「今、何をするべきか」を、真剣に考える時が来ています。われわれ教師は未知の課題に協働しながら向き合い解決していく必要があります。趣味のようにサービス残業し、過酷に耐えヒーヒー言っている場合ではありません。
子どもたちを“食えない大人”にしないために
保護者や地域も、そんな「若い」学校をいかに支え、みんなでどう協力して子どもたちを育てていくかという課題に直面します。必要であれば苦情や意見は言う権利がありますが、理不尽な物言いは控え、前向きな協力を考え、具体的に学校を応援する行動に移さねばならぬときがすでに来ています。「勉強やしつけは学校任せで、口だけは出す」という姿勢では、子どもたちを“食えない大人”にしてしまい、結局、自分がいつまでも苦しい思いをすることになります。
私は、鍵を握るのは「コミュニケーション」だと考えています。大人も子どもも話し合い、お互いを理解し尊重し合い、常にポジティブに協働、共生、共栄、平和な世の中を、みんなで目指すべきだと思います。(内田明)
※この記事は、誠ブログの「近未来の学校は若い教師でいっぱいになる」より転載、編集しています。
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