「デル」の女性は9割以上が産休後に復帰――復帰支える“お互い様”の精神:制度と社風、どちらも必要(2/4 ページ)
女性の社会進出が遅れていると言われる日本で、出産後の女性の職場復帰率が「9割以上」という企業がある。女性が働き続けられる環境を作る秘けつは何か。今年でマネジメント職8年目となるデルの女性社員に聞いた。
デルの休暇を取りやすい“社風”とは?
まずは休暇制度を見ていこう。デルの産前産後休業は、産前42日と産後56日が認められており、この期間は給与の75%が支払われる(対象は女性のみ)。育児休暇は産前産後休業と合わせて1年取得でき、条件を満たせば1年半まで延長も可能だ。この期間は給与の50%が支払われるという。
育児休暇は男性も対象に入り、配偶者が先に育児休業を利用している場合でも、子どもが1歳2カ月に達するまでの間は1年を限度として取得可能だ。この制度を利用して育休を取得する男性社員も増えているという。
育児休暇が終わって会社に復帰した後も、時短勤務制度がある。子どもが3歳になるまで、9時から16時というシフトで働けるのだ。このほか出産一時金、育児/介護費用補助金、看護休暇なども整備されている。
とはいえ、産前産後の休暇や育児休暇は、制度の有無にかかわらず、制度をちゃんと利用できる社風があるかどうかも重要な要素だ。有給休暇が与えられても、消化率が高い企業と低い企業に分かれることからも想像はつくだろう。
デルの場合、“ノー残業デー”のようなワークライフバランスを推奨する制度を導入しているわけではないが、「産休、育休、復職後の時短、シフト制度、在宅勤務などの制度を活用しながら、自分のライフスタイルに合わせて働けるし、そうする人が多い」と小野氏は言う。デルにはしっかりとした休暇制度に加え、それを自由に使える社風もあるようだ。
社員の8割が30〜40歳代、子育てへの理解も
実際、営業部長として60人の部下を持つ彼女自身、部下が産休で休むことを当然だと言う。「自分のチームにも産休や育休から戻ってきたメンバーがいますが、時短などを使ってがんばって仕事を続けています。自分の仕事や子どもの発育に合わせて働き方をリクエストできるので、休暇を取りやすい雰囲気があります」。
折しもDWENに参加した日本の女性経営者からは「子どもがいる女性を採用したいが、突然休むから難しい」という声も上がっていた。産休や育休を取る部下に“この大事な時期に休むの?”と思うことはないのか、と小野氏に聞くと「戻ってきてくれると思っているので、“がんばって産んで、保育所を見つけて戻ってきてね”という気持ちで送り出しています」と笑う。
こうした考え方を持つのは彼女だけではない。「確かにマネジメント層は男性が多いですが、彼らの多くは家に帰ると“お父さん”。部下に子どもが産まれると分かると、制度を利用しなさいと奨励しているようです。身近なことなので理解があるのでしょう。社員の8割が30〜40歳代というのもありますが、デルのカルチャーなのかな」と小野氏は分析する。
日本支社を設立してから21年。デルは「企業が成長するためには社員が能力を発揮できる環境を整えることが不可欠」というトップの考え方が幹部層にしっかり浸透しているようだ。
チームプレイの中にも個人のライフスタイルを尊重する文化が根付いた背景にあるのは、マネジメント層や男性が休暇を推奨するという文化だ。彼らの多くが、産休や育休を現在利用していたり、すでに利用した世代であり“お互い様”と思える――これがデルのカルチャーなのだろう。
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