何が変わる? iBeacon対応の「近未来レストラン」へ行ってみた:新・O2Oマーケティングの期待と課題(3/3 ページ)
「iBeacon」が、今後のO2Oマーケティングの切り札になる──と言われている。先日、埼玉県新座市にオープンした“近未来のIT武装レストラン”で、Beacon/O2O施策の可能性と課題を確認する。
「iBeacon」による集客システム、可能性と課題
トリニティの星川哲視社長は「現在はまだ試験導入の段階」と前置きしながらも、「iBeacon」による集客システムの課題と可能性について、次のように語ってくれた。
「iBeacon機能で、(iOS 7以降の)iPhoneが電波の届くエリアに入れば、何かのアクションを起こす──例えばクーポンのプッシュ配布などができるようになります。その距離は最大で半径10メートルくらい。店内から、お店の前を通りがかった人の範囲までという感じです。とはいえ、事前に承認を得ないで一方的にクーポンを送りつける方法は、おそらく不快と感じることでしょう。今後Beaconを導入する店舗が増えたとき、商店街を歩くだけで大量の通知が来るとなると……いかがでしょう。
うちの場合は立地が繁華街ではないので、たまたま店の前を歩きで通りがかるケースは比較的少ないかもしれません。それならどうするかの考え方もありますし、ともあれここは大きな課題です。まずはWebやFacebook、LINE、メールニュースといった従来の方法で、まずはお客様とのコミュニケーションの場を設けて事前に登録をしてもらった上で、近くに来たらそれを通知するという方法から、これまでとは違う新しい価値を提供するスタイルを──と思っています。
将来的に、誰もが持っている(あるいは将来的にOSの標準機能として搭載されるような)クーポンアプリのようなものがあれば、そこに向かって配信するという方法もあるでしょう。iBeaconについては、たまたま通りかかった一見さんをクーポンで呼び込むというより、リピーターを囲い込むために使える仕組みという気がしています。一度来店していただいたお客様が、再び店の前を通ったときに気が付いてもらう使い方ですね。将来的には、スタンプをためる会員カードのように、電子的に来店回数を記録して、回数に応じた特典を提供する施策もやってみたいと思います」(星川社長)
昨今、クーポン券や会員カードは多くの店舗で導入されているリピーターを呼び込むための施策。ただ利用者からすれば、たまにしか行かない店で入会を促されたり、そもそも財布を圧迫するのがいや、と思う人もいる。筆者は財布がパンパンになるのを嫌って会員カードは財布とは別に保管し、店へ行く日のみそれを個別に財布へ移し替える。ただ、何かのついでにたまたま足を向け、会員カードがなくて特典が受けられなかった悔しい経験はよくある。財布に入っていたとしても存在を忘れており、帰り道で悔しがることもよくある。
スマホへ自動通知してくれる方法は、この部分をスッと解決してくれる。クーポン券や会員カードを持ち歩く手間がなく、しかもクーポンが使えることにちゃんと気付けることだけでも、顧客満足度の向上につながるはずだ。もちろんこれだけではない。リピーターをガッチリつかみ、そして新規客の呼び込みと集客に結びつけるのが重要で、模索中と星川社長は述べる。
すでに定着したスマホ、そしてじわじわと自然に、身近になっていきそうなBeaconシステム、これをどう生かせるか。これまでなかった顧客価値の提供や、新たな販促の仕方がほかにもいろいろ思いつくかもしれない──そんな部分が「使い方次第で化ける」と言われている理由である。飲食業界ではない他業種の人も、この部分は今後、事業を成長させる大きなヒントになるはずだ。
関連記事
- クレカ対応個人決裁「Square」に新機能、ネット接続なしでも受付可能に
クレジットカードが使えるモバイルレジサービス「Square」に、一時的にネット接続のない場所でも使える新機能「オフラインモード」が加わった。ネットに接続できない場所や一時的につながりにくい場所でも決裁サービスを続行できる。 - “並ばず買える”「スマートオーダー」 the 3rd Burgerなど都内各店舗に導入
人気ショップなのに、並ばずに買える──。iBeacon機能を組み込んだモバイルウォレットアプリ「O:der」を使い、飲食店の新たな体験を提案するサービスが登場した。 - ナノ・ユニバース店舗に“Beacon”連動型のO2Oサービス──ACCESSのシステムで展開
スマホ普及率が高く、トレンドに敏感な20代〜の層を今後どう取り組むか。アパレルブランド「ナノ・ユニバース」がBeacon機能を用いた顧客サービスを、ACCESSの位置連動型コンテンツ配信ソリューションを導入して実施する。 - モバイルPOSレジ+リクルートポイントで沖縄のお土産屋を活性化できるのか?
那覇空港や国際通りで、リクルートポイントを軸にした観光地O2O施策が実施中だ。導入無料のモバイルPOS「Airレジ」を導入した、かりゆしウェア店に話を聞いた。 - 「ACCESS Beacon Framework」がAndroidにも対応、“Beacon”お試しキットも提供
“Beacon”を用いたコンテンツ配信ソリューション「ACCESS Beacon Framework」がAndroidにも対応。機能やサービスを試せる「評価キット」も用意する。 - ドコモも「iBeacon」対応加速 iPhone向け試験サービス開始
NTTドコモが、近づくだけでポイントが貯まる「ショッぷらっと」サービスにiBeacon機能を追加する。これまでの音波認識の仕様に加え、アプリ起動なしでも通知できるiBeaconに対応させることで、O2O戦略をより加速させる。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.