なぜ世の中に悪い人は少なく、いい人が多いのか:仕事をしたら“動物”のことが分かってきた(前編)(4/8 ページ)
「また騙された。正直者がバカをみる世の中はおかしい」と感じたことがある人も多いのでは。トクをするのであれば悪い人が増えそうだが、この世はいい人のほうが多い。なぜか? そこで動物の行動に詳しい、竹内久美子さんに人間の生き方を聞いた。
騙すのが上手な動物
土肥: それにしても、シャコといえば寿司屋でしか見たことがないのですが、なかなかしたたかですねえ(笑)。弱いくせして、ハッタリの脅しで虚勢を張るなんて。シャコ以外にも、騙すのが上手な動物っていますか?
竹内: チンパンジーの先駆的な研究者で、ジェーン・グドールという人がいます。彼女は1960年代の初めから、タンザニアのゴンベ・ストリームという所で研究をしていました。
そこでは、チンパンジーが数十頭から百頭ほどいて、集団で暮らしていました。オスは6頭、そして複数のメスがいて、子どもたちがいました。チンパンジーのオスの世界には順位があって、高い順位に立てばメスと交尾できるチャンスが増える。オスは普段から「オレは強いぞー」と威嚇するのですが、それはどういったパフォーマンスだと思いますか?
土肥: ゴリラだったら、確か自分の胸をウホウホと叩きますよね(ドラミング)。チンパンジーはなんだろう? 口を大きく開けて叫ぶとか?
竹内: 落ちている枝をひきずって「ガサガサ」と大きな音を出し、吠え声をあげるんですよ。そして、走りまわることでその音が大きくなる。そうすることによって「オレは強いんだぞー」というアピールになる。
そこで順位が最下位のオスは前代未聞の行動に出たんですよ。彼は、大きな空き缶を2つ見つけたんですよ。それは18リットル入るモノなので、かなり大きい。そして、2つの空き缶を打ちつけて「ガンガン」と大きな音を出し始めました。木の枝と違って、ものすごく大きな音が出るので、かなりのアピールになります。その結果、最下位だったのに、一気にトップに登りつめたんですよ。
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