なぜ世の中に悪い人は少なく、いい人が多いのか:仕事をしたら“動物”のことが分かってきた(前編)(6/8 ページ)
「また騙された。正直者がバカをみる世の中はおかしい」と感じたことがある人も多いのでは。トクをするのであれば悪い人が増えそうだが、この世はいい人のほうが多い。なぜか? そこで動物の行動に詳しい、竹内久美子さんに人間の生き方を聞いた。
竹内: 著書『騙し合いの法則 生き抜くための自己防衛術』でも紹介しましたが、ケンブリッジ大学(英国)のM・A・エルガーは建物の屋上に1.2メートル四方のエサ場を作りました。このエサ場で、4種類のエサを与え、最初にエサを見つけたスズメがどんな反応を示すのか調べました。
(1)食パン一片(3グラム)
(2)食パン一片(12グラム)
(3)食パン3グラムをバラバラにほぐしたもの
(4)鳥のエサ用の種子(ヒエやアワのような小さな粒)
土肥: で、どういう結果になったのですか?
竹内: (1)の3グラムのエサに気づいたスズメは、1分間に平均7回鳴きました。(2)の12グラムのエサには平均8回、(3)のバラバラにしたものには平均17回、(4)の種子には平均27回でした。
エサが塊になっているときには、仲間を呼んでもそれに近づけるのは数羽。分け合って食べることが難しいので、あまり鳴かずにエサを独占しようとする。このときには、敵にやられる可能性が高いので、スズメはそのリスクを承知の上でエサを食べている。一方、エサが小さいときには仲間を呼んでもエサを分かち合える。だから、よく「チュンチュン」鳴く。
スズメは集団でいると、誰かが警戒しているので、自分が敵にやられる確率も下がる。なので「チュンチュン」と鳴いて、仲間を呼んだほうが得策なんですよね。
土肥: ということは、「ここにたくさんのエサがあるよ。みんなで一緒に食べようよー」という親切心ではない?
竹内: 「譲り合いの精神」「思いやり」「親切心」といったものではありません。単なる「自己防衛術」です。一羽一羽が警戒することで、誰もがトクする仕組みなんですよ。
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