都心〜羽田「JR東日本の羽田新線」、新案で再浮上する「やっかいな問題」:杉山淳一の時事日想(4/6 ページ)
都心と羽田空港を結ぶ、JR東日本の「羽田空港アクセス線構想の概要」が発表された。予想をはるかに超えた驚きの内容だった。「JRで直接羽田へ」を歓迎する人も多いが、ある「やっかいな問題」も抱えている。それは「りんかい線」。JR東がりんかい線を買収するという報道も出ている。
京急は安心? 川崎・横浜の自治体は落胆?
なぜ、JR東日本がこの路線の計画を進めるか。その理由は先月(2014年7月18日に)掲載した本コラム『なぜ、いま「羽田空港関連の鉄道建設」が盛り上がっているのか』をまずはご覧いただきたい。ただし、新トンネルを建設する計画が明らかになったので、少し補完させていただく。
この計画の発表で、ライバルの鉄道の立場はどうなるか。東京モノレールにとっては大きな脅威となる。しかし、東京モノレールの起点の浜松町は再開発が予定され活気づく。霞ヶ関など官公庁へのアクセスにも便利だ。大井競馬場や天王洲アイルなど通勤需要もある。今後、羽田空港全体の利用客が増えることも合わせると、すぐに危機的な状況にはなりにくい。
乗り物好きな視点で言うと、東京モノレールがもっとも楽しい。JR東日本はトンネルだらけ、京急も高架区間以外は殺風景だ。観光客には景色のよいモノレールをオススメしたい。なお前掲のコラムでは「東京モノレールの新橋延伸は検討すべき」と書いたけれど、2014年8月20日に「東京モノレールは東京駅延伸を検討中」との報道があった(関連リンク参照:東京モノレールの東京駅延伸検討 羽田空港まで28分→22分に:SankeiBiz 2014年8月21日)。やはり同じことを考えていたようだ。ただし、途中に駅は設けないらしい。地下鉄銀座線やゆりかもめとの連絡を考えると、新橋駅は必要と思う。
京急は安心したはずだ。都心から羽田空港への輸送は新たなライバルとなる一方で、横浜方面から羽田空港への鉄道アクセスは独占状態が続く。当初の構想どおり東海道貨物支線を活用するルートだった場合、横浜方面からの直通列車も可能だった。
これとは逆に、横浜市や川崎市からは落胆の声が聞こえてきそうだ。東海道貨物線の旅客化計画を推進しており、そのメリットの1つに羽田空港アクセスがあった。しかし、JR東日本の計画では羽田空港から南への路線延長は含まれていない。
2000年の運輸政策審議会答申18号によると、次の2つの路線について「今後整備について検討すべき」と示されていた(< >は項番)。
私はこの二つは連動すると思い込んでいた。しかしよく見れば、<22>についてはもともと貨物線に触れていない。新線という解釈もできた。<27>が貨物線旅客化計画である。今回のJR東日本の計画は<22>の具現化であり、<27>とは別物だ。しかし、<22>が新トンネル案で決まったため、<27>の羽田空港以北旅客化の可能性は小さくなった。そもそも<27>は経由地が羽田空港ではなく「羽田空港口」となっている。羽田空港島の貨物線上のどこかであろう。ターミナル直結ではなく、空港利用者にとってさほど便利ではなさそうだ。
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