「オープンデータ」を推進、東京メトロの狙いは?:地下鉄全線の列車位置を公開(1/4 ページ)
東京メトロが全線の列車位置や遅延時間といった情報を公開し、そのオープンデータを利用したアプリ開発コンテストを開催する。民間主導で行うのは珍しいケースとのことだが、東京メトロの狙いはどこにあるのか。
東京メトロの「もっとうれしいアプリ」を募集――創立10周年を迎えた東京メトロが、データの新たな活用を目指す取り組みに乗り出した。
使うのは、今、話題のオープンデータ。これは行政や企業が保有するデータを誰でも再利用可能な形で公開するもので、公開データを利用したアプリを生活者に自由に開発してもらうなど、データの新たな価値を創出する動きとして注目を集めている。
欧米の政府や自治体を中心に取り組みが進んでいることを受け、日本政府は2013年6月に「世界最先端IT国家創造宣言」を閣議で決定。2015年度末までに、他の先進国並みに公共データを一般公開することを目標とした。すでにオープン化の取り組みを積極的に進める福井県鯖江市の例もある。ただ、国全体で見れば、まだあまり進んでいないのが現状だ。
そんな中、オープンデータに対して積極的に取り組もうとする企業がある。東京メトロは8月19日、全線の列車位置や遅延時間といった情報を公開し、一般ユーザーなどにアプリを開発してもらう「オープンデータ活用コンテスト」の開催を発表した。
Webアプリ、iOS/Android/Windowsストアアプリなど、アプリならば何でもよく、個人や法人、グループを問わず誰でも参加できる。アプリストアで公開した状態で応募するが、誰でも使えることを目的としているため、無料であることが条件となる。既存のアプリでも、提供データを利用して機能が追加されるなどした場合は応募可能という。
アプリ開発者用Webサイトでは、同社がWebで公開している列車時刻表、駅別乗降人員などの情報に加え、1分ごとの列車位置(駅か駅間の2種類)や始発駅・行き先駅、車両の所属会社、遅延時間といった“オープンデータ”情報を提供する。
データ提供と応募受付の開始日は2014年9月12日で、アプリの応募は2014年11月17日まで。YRPユビキタス・ネットワーキング研究所の協力を受けて実施し、同研究所所長の坂村健氏などが審査員を務める。グランプリ(1点)には賞金100万円、優秀賞(1点)には50万円、「goodコンセプト賞」(2点)には15万円、「10thメトロ賞」(4点)には5万円を贈呈する。
坂村氏はコンテストを通じて公開されるアプリは「100を超えるのではないか」と期待を寄せる。「審査では革新性や意外性を重視したい。われわれが思いつかないようなアイデアが出てくる可能性がある、というのがオープンデータの醍醐味。楽しみにしている」(坂村氏)
過去にも国が主導するプロジェクトで、企業がデータを公開する実験などはあったが、企業自らがデータ公開に乗り出したのは、日本の鉄道事業者として初めてであり「民間主導で行うのは極めて先進的なケース」(坂村氏)という。なぜ、東京メトロは積極的にオープンデータに取り組むのだろうか。
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