なぜ日本人選手がニラまれるのか――スポーツ界に広がる人種差別問題:臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(3/4 ページ)
Jリーグでの人種差別問題が、今年に入って2度も表面化した。一部のサポーターが外国人選手にバナナを振りかざしたり、人種差別の横断幕を掲げたりして、波紋を呼んでいる。このような許されない行為は日本だけではなく、海外でも行われている。例えば……。
なぜ日本人選手がニラまれるのか
一体なぜ、こんなことがまかり通るのか。また、どうして日本人選手がニラまれなければいけないのか。そう疑問に感じた知人の日本人ジャーナリストが、前出のディアズ氏に「あなたは、なぜ黒田にトラッシュ・トークを言い放ったのか」と直撃すると「あの行為に関しては審判として申し訳なかったと思っている」と謝罪の弁を口にしながらも次のような答えが返ってきたという。
「黒田が嫌いだったわけではない。だが正直に言わせてもらえれば、私は日本人があまり好きではないのだ。メジャーの審判の多くがそう思っているかどうかは知らないが、少なくとも言えるのは私が日本人を嫌うように米国人の中には他民族や多人種を毛嫌いする人間が少なからず存在するということ。審判だけでなくプレイヤーや監督、コーチ、あるいはファンの中にだって、日本人のことを気に食わないと思う連中だっているはずだ。理由? そんなものは特にないよ。ただ『何となく』ということだ」
その日本人ジャーナリストが「それは明らかな差別行為だ」と言って怪訝(けげん)そうな表情を浮かべると、ディアズ氏は逆ギレ気味にこう続けた。
「では逆に聞くが、日本のスポーツ界では差別行為が一切ないと言い切れるのか?」
思わず「うっ」と言葉に詰まってしまったのは、その日本人ジャーナリストだけではない。この気分が悪くなるような話を聞かされた私も同様であった。実は、このディアズ氏とまったく同じ言葉を私は今から10年以上前にも耳にしている。
2002年にメジャーリーグの取材へ行ったときのことだ。サンフランシスコ・ジャイアンツに所属していた新庄剛志(現在は引退)を大勢の日本人メディアとともに本拠地AT&Tパークのクラブハウス(ロッカールーム)で取り囲んでいると、ジェフ・ケント(現在は引退)という大物内野手から次のような罵声を浴びせられた。
「ヘイ、ジャップのクソ野郎ども! 邪魔なんだよ! このクラブハウスから出て行きな!」
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