なぜ日本人選手がニラまれるのか――スポーツ界に広がる人種差別問題:臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(4/4 ページ)
Jリーグでの人種差別問題が、今年に入って2度も表面化した。一部のサポーターが外国人選手にバナナを振りかざしたり、人種差別の横断幕を掲げたりして、波紋を呼んでいる。このような許されない行為は日本だけではなく、海外でも行われている。例えば……。
耳を疑った。クラブハウスはメディアの取材時間として開放されており、もちろん我々側に非はまったくなかった。
その後、ケントの日本人メディアに対する嫌がらせは次第にエスカレート。数日後にはクラブハウスへ入ろうとすると、待ち構えていたジャイアンツの広報部員から「ミスター・ケントから、日本人メディアのあなたにプレゼントです」と歯磨き粉と歯ブラシを手渡された。頭の中で「?」を並べながら、その理由を尋ねると「ミスター・ケントが『日本人はタバコばかり吸って息がクサいから、選手の迷惑にならないようにしてほしい』と言っていたからです」という。
さらに囲み取材でケントに接近しようとした時には「この輪の中に日本人メディアがいるので何も話すことができない」と吐き捨てられたこともあった。
ケントは白人至上主義者とささやかれており、日本人選手の新庄や黒人スター選手のバリー・ボンズら有色人種の同僚たちとも確かに折り合いが悪かった。とはいえ、これだけネチネチとやられれば、それほどプライドのない私にだって我慢の限界がある。思い切ってケントに「あなたは差別行為が正しいことだと思っているのか」とぶつけてみた。すると、いつもは白い肌のケントの顔がみるみるうちに紅潮。彼は「F○○K」を連発しながら、今にも殴りかからんばかりの勢いでこうまくしたてた。
「では逆に聞くが、日本のスポーツ界では差別行為が一切ないと言い切れるのか?」
12年後にディアズ氏が同じ言葉を口にした時と決定的に違ったのは、こう言われても当時は「YES」と自信を持って胸を張れたことである。
2014年の現在――。日本のスポーツ界も社会同様におかしな空気が蔓延(まんえん)し始めてしまっているようでならない。
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