“納豆不毛地帯”の大阪で、なぜ小さな店の納豆がヒットしたのか:仕事をしたら“ストーリー”ができた(4/6 ページ)
「関西人は納豆が嫌い」と言われている中で、大阪の東部にある大東市で注目されている納豆メーカーがある。その名は「小金屋食品」。従業員数が10人も満たない小さな会社が、なぜウケているのだろうか。
創業者の情熱を「物語」に
川上: ご指摘のとおり、それだけではなかなか難しい。そこで、2代目は創業者の納豆にかける情熱を「物語」にして、それを伝えていくことにしました。またデザインの勉強などをして、Webサイトをリニューアル。原材料や製法などのこだわりも記しているのですが、それよりも創業者のエピソードを前に押し出しました。
その結果、少しずつ知名度が上がっていきました。販売方法も以前はOEMが中心でしたが、自社ブランドを出さない売り方を止めて、直販にしました。もちろんこうした試みがすぐに成功したわけではありません。何度も何度も試行錯誤を繰り返して、やっと注目されるようになりました。
リピーターはどんどん増えていって、今ではいろんなところから引っ張りだこ。「大阪を代表する納豆会社」に成長されました。
ポイントは、製品にこだわるだけでなく、創業者の「物語」を発信したこと。食べて「おいしい」と感じたら、人に薦めたくなりますよね。そのときに「おいしいから」と言うだけでは、パンチが弱い。「おいしいから」のあとに「創業者の物語」を付け加えると、“ちょっと食べてみようかな”という気持ちになりますよね。単に「おいしい」だけでは、こうしてドイさんに伝えることはもなかったですよ(笑)。
土肥: ということは、記事になることもなかったわけですね(笑)。考えてみると、商品力はあるのにアピールが足りないために、売り上げが伸びない……といった会社って、たくさんあるのではないでしょうか。
川上: もう山のようにありますよ。大手のコンビニやスーパーは「商品だけを売っていればいい」。価格、立地、品ぞろえなどで売れるか売れないかが決まります。ひと昔前までは、小さなお店でも商品だけを売っていればもうかっていたころがありました。でも、いまは違う。大手と同じように、商品だけを売っていては厳しい。なので、納豆の小金屋食品のように「納豆屋は納豆を売る」だけではダメなんですよ。納豆が持っているチカラを引き出すために「物語」が必要になってくるわけです。
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