葬儀代を明朗会計にした会社――すぐに“嫌がらせ”をされた:仕事をしたら“葬儀を安く”できた(前編)(2/6 ページ)
不透明な葬儀業界において、明朗会計で料金をガラス張りにした会社がある。それは、名古屋市に本社を置く「ティア」。葬儀代金をオープンにして、価格を安くしたら、すぐに“嫌がらせ”を受けたという。同社の冨安徳久社長に話を聞いた。
大学は行かずに“おくりびと”に
土肥: 冨安さんが葬儀の仕事と出会ったのは、大学入学前だったそうですね。とある葬儀屋でアルバイトを始めたところ、ご遺族が涙を流しながら社員に感謝している姿を見られた。そのとき「こういう仕事をしたい」と思われ、入学前にもかかわらず「社員にしてください」と頼まれたそうですね。
そして、大学は行かずに“おくりびと”を続けられ、1997年に会社を創業。業界に対して、いろいろ不満があったと聞いていますが。
冨安: いまから17年前のことですが、当時の葬儀業界は情報が開示されていなかったので、消費者はよく分からなかったんですよ。葬儀を行うにあたって、遺族は担当者と打ち合わせをしますが、そのときは「説得」されていました。なぜなら、葬儀に関するさまざまな情報が開示されていなかったので、遺族は説得されていたんですよね。決して「納得」はしていない。
私は「互助会」と呼ばれる会社で働いていたのですが、「これからの時代は、互助会の時代ではない」と思いました。互助会とは、将来の葬儀に備えて、会費を積み立てていくシステムのこと。月々の掛け金を支払うことで葬儀を行うことができるのですが、1回の会費だけで葬儀を行えるようにしたんですよ。
土肥: 毎月、お金を積み立てていくか、1回払いなのかの違いでは?
冨安: いえいえ。互助会の葬儀代は高い。私はそこで働いていたので分かるのですが、もっと安い価格で行えるんですよ。でも、どこもやらなかった。
土肥: それはなぜですか?
冨安: 理由のひとつに、消費者がお葬式をタブー視していたことが挙げられます。「親が生きているうちに、お葬式のことを考えるなんて不謹慎だ」といった感じで、葬儀のことを詳しく知ろうとしない。そうした“知ろうとしない”感情をうまく利用して、業界はブラックボックス化していきました。
しかし、私はこう考えたんですよ。「なぜ死を考えるのはいけないことなのか。死も人生の一部でしょう」と。じゃあ、どうすればいいのか。「情報を開示すれば、死のことを考えてくれるのではないか」と思いました。
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