葬儀代を明朗会計にした会社――すぐに“嫌がらせ”をされた:仕事をしたら“葬儀を安く”できた(前編)(3/6 ページ)
不透明な葬儀業界において、明朗会計で料金をガラス張りにした会社がある。それは、名古屋市に本社を置く「ティア」。葬儀代金をオープンにして、価格を安くしたら、すぐに“嫌がらせ”を受けたという。同社の冨安徳久社長に話を聞いた。
開示できる情報はすべてオープンに
土肥: そうした想いがあって、会社を創業された?
冨安: はい。会社を立ち上げるわけですが、開示できる情報はすべてオープンにしました。同業他社がやっていないことは、すべてやろうと思って、CMで「生前見積もり」という言葉を使いました。また、Webサイト上でも「生前見積もり」ができるようにしました。営業マンは自宅に訪問して、チラシを配るんですよ。そのチラシにも価格が書いているので、お客さんからは「こんなに詳しい見積もりは見たことがない。本当にこの価格でできるの?」といった声をよく聞きました。
多くの人はこの業界のことを「葬祭業」と呼んでいますが、私は「サービス業」だと思っています。サービス業の視点で「とにかく遺族につくす」ことにこだわってやっていると、徐々に口コミで広がっていきました。その結果、初年度(1997年度)の葬儀件数は64件でしたが、昨年度(2013年度)は6862件になりました。
なぜ、ここまで業績を伸ばすことができたのか。それは、情報を開示して、明朗会計にしたこと。しかもリーズナブル。適正価格をどこよりも早く提示したことが、消費者に支持されたのではないでしょうか。
土肥: これまで業界が隠してきたことをオープンにしたわけですから、いろいろな嫌がらせがあったのではないでしょうか?
冨安: ありました、ありました(笑)。ある団体の人が「ウチの組織に加盟しろ」と言ってきたんですよ。なぜ、加盟しなければいけないのかと聞いたところ「このままだと、葬儀代金が値崩れしてしまうから」と言うんです。
土肥: また、えらく正直に(笑)。
冨安: 業界が結託して、高価格の葬儀を維持しようと動いていたんですよ。「消費者は気にしていないから、いや、そもそも知らないんだから、この価格でやろうよ」といった感じ。でも、私がなぜ会社を立ち上げたかというと、高価格の葬儀に疑問を感じたから。値崩れさせたいためにやっているのだから、そんな団体には加盟しませんでした。そうしたら、その後大変なことに……。
土肥: どうしたんですか?
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