欧米の有名大学に、中国から“億単位”の寄付が次々と……一体なぜ?:伊吹太歩の時事日想(2/3 ページ)
中国の実業家が、欧米の有名大学に巨額の寄付をするケースが増えている。自国の大学に寄付しないことに対して“ネット民”が怒りの声を上げているが、この寄付がひいては中国の外交にとって、プラスの影響を及ぼす可能性があるのだ。
「なぜ中国の大学に寄付しないのか」
米フォーリン・ポリシー誌によれば、中国版のツイッターである微博(ウェイボー)には、「なぜ(チャン一族が)中国の大学に寄付しないのか」というものや「裏切り者」といった怒りのコメントが上がっているという。さらには「中国でカネを稼いで米国に寄付するとは」という呆れたようなコメントもあると報じられている。
彼らが怒る背景には、米国の大学に対する中国人富豪の寄付が最近増えていることもあるとみられる。例えば2010年には、投資ファンドを設立して富豪になった中国人のツァン・レイ氏が888万ドル(約9億5000万円)を母校の米イエール大学に寄付している(ちなみに中国では8という数字は幸運の数と言われている)。また2014年6月には、中国不動産業界の大物であるパン・シイ氏がやはりハーバード大学に、中国人学生への奨学金制度を設立するために1500万ドル(約16億円)を寄付した。
この流れは米国ばかりではない。温家宝・前首相の親族が2012年に、英オックスフォード大学に630万ドル(約6億7000万円)の寄付を行っていたことが最近になって判明し、中国政府の思惑が最高レベルの大学に及んでいるのではないかと指摘されている。大学側は寄付者が中国政府と関係があることを否定しているが、今も大学側は批判の矢面に立たされている。
オックスフォードのケースは別にしても、ネット民が同胞に文句を言いたくなる気持ちも分からなくはない。だが現実には、中国の高等教育機関では、いかにも中国らしい体制が敷かれており、中国の富豪たちが多額の寄付をする気が失せるのも理解できるような状況がある。
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