欧米の有名大学に、中国から“億単位”の寄付が次々と……一体なぜ?:伊吹太歩の時事日想(3/3 ページ)
中国の実業家が、欧米の有名大学に巨額の寄付をするケースが増えている。自国の大学に寄付しないことに対して“ネット民”が怒りの声を上げているが、この寄付がひいては中国の外交にとって、プラスの影響を及ぼす可能性があるのだ。
中国の大学で広まる汚職、そして言論統制
米フォーリン・ポリシー誌は中国のリベラルなメディアを引用し、中国の大学では汚職と不透明な運営がまん延しており、2012年以降、いくつかの有名大学の幹部など29人が汚職で職を失ったと報じている。
中国の最高峰と言われている北京大学は、かつて自由な表現の場として活発な議論が行われたこともある大学として知られているが、最近では中国共産党による言論の管理、つまり、党への批判的な言論を封じようとする動きが顕著になっているという。ロイター通信によれば「同大学はここ数年、インターネットにおける大衆の意見を24時間監視するシステムを設置している」と報じている(参照記事)。
最高峰の教育機関がこんな有様では、例えばハーバード大学で行われているような自由で活発な研究や議論ができるとは思えない。そこで欧米の有名大学への寄付、という発想になるのだろう。さらにソフト・パワーうんぬんの前に、単純に「世界的に名前を残したい」という思いがあるのかもしれない。中国の大学に寄付していたのでは、ハーバードに寄付するほどの世界的な知名度は得られないだろう。
ただ、現実には、世界の高等教育の分野に多額の寄付をする人たちが、中国のソフト・パワーに多少なりとも寄与しているという考え方もある。もちろん、多額の寄付者たちが中国国内に不満をもっていることは間違いないだろう。視野の狭いネット民はその部分だけに敏感に反応しているわけだが、こうした寄付によって中国共産党も「ソフト・パワー」という観点で利益を得る可能性があることを、彼らも理解したほうがいいのかもしれない。
いずれにせよ、中国人が欧米の最高峰レベルの教育機関に、その名を残しつつあることは間違いない。日本人も負けてはいられないだろう。
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