どんな人が向いているの? 葬儀会社で働く人が感じる壁:仕事をしたら“葬儀を安く”できた(後編)(5/5 ページ)
数年前に映画『おくりびと』がヒットしたが、葬儀会社で働くのにはどんな人が向いているのだろうか。葬儀業界で40年近く働いているティアの冨安社長に話を聞いた。
最初に感じる壁
土肥: どういった人がこの仕事に向いているのでしょうか?
冨安: 相手の立場に立って、物事を考えられるかどうかは大切ですね。そういった感性って、学校ではなかなか教えてくれません。採用面接でもそうした感性があるのかどうかを見極わめようとするのですが、なかなか難しい。どんな仕事でも経験をしなければ分からないことがたくさんありますから。「つらい」「しんどい」といったことは、実際に働いてみないと分からないことですし、「この仕事はやりがいがある」と思えることも、実際に働いてみないと分かりません。
土肥: 新入社員が最初に感じる壁は何でしょうか?
冨安: 遺体を見ることですね。「会社の理念に共感した」「死というのは誰も一度は通る道」「遺族のために貢献したい」などと頭で理解していても、実際に遺体を見て、触ることができなければこの仕事を続けることはできません。
現場に出れば、失敗をたくさん経験します。もちろん、現場に出る前にいろいろな研修を行いますが、サービス業って“瞬間芸”なんですよ。その瞬間にどういった声をかけることができるのか、その瞬間に何をしてあげることができるのか。感性が磨かれていなくて、経験が足りない人というのは、どうしても後手に回ってしまうので、そうした人の対応に接すると遺族は「この人は頼りないなあ」と感じてしまう。
いろいろな失敗を経験すると、ストレスを感じて前に進めない人もいます。失敗を経験して、次はどうすればいいのか。それを学べるのも、また現場しかないんですよね。
土肥: なるほど。葬儀会社って特殊な仕事だなあと思っていましたが、ある部分ではやはり特殊で、ある部分では他の仕事と同じだなあと、そんな印象を受けました。本日はありがとうございました。
(終わり)
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