“イケてない企業”が陥りがちな、2つのワナ:世界で売れてる、日本発のヒット商品(2/5 ページ)
日本製テレビのリモコンにはたくさんのボタンが付いている。消費者からは「こんな機能、いらないのでは?」「一度も触ったことがないボタンがある」といった不満の声が聞こえてきそうだが、なぜリモコンは複雑になってしまったのだろうか。
消費者側には伝わっていない
永井: その答えを言う前に、ひとつ質問をさせてください。スーパーやコンビニなどに行けば、飲料の新商品が並んでいますが、1年間にどのくらいの商品が販売されていると思いますか?
土肥: うーん……50商品くらいですかね。
永井: 2000商品もあるんですよ。
土肥: なんと!
永井: 平日は約200日ですから、単純に計算すると、1日に10商品ほど発売されています。先ほど、ドイさんは年間に50商品くらいかな、と話されていましたが、商品名すべて言えますか?
土肥: 無理。
永井: ドイさんと同じように、ほとんどの人は答えることができません。つまり、多くの商品がスルーされているんですよ。企業側は「この新商品はオススメですよ」とアピールしているのですが、消費者側には伝わっていないんですよね。
企業側の一方通行だから伝わらない。逆に、消費者側の声を聞いたらいいのでは? と思われるかもしれませんが、これもダメなんですよ。
土肥: どうしてですか? 商品開発にあたって消費者の声を聞くのは必要なはず。
永井: もちろん、無視しろという話ではありません。ただ、消費者の声を聞いて、聞いて、聞いて、テレビのリモコンはいろいろな機能が追加されましたよね。「お客さんの言う通りにすればいいんだ」をモットーにして、とにかく言うとおりに作っていったら、ボタンがたくさん付いてしまった。
例えば、ご自宅にあるテレビやDVDのリモコンを思い出してみてください。ボタンがたくさんあって機能満載ですが、使いこなせませんよね。一方でApple TVのリモコンはボタンが3つだけなので、とてもシンプル。「あれも欲しい」「これも欲しい」というお客さんの言いなりにならず、「本当に顧客が必要とするものは何か」を考え抜いた結果、こういうデザインになったのです。
先ほど、ドイさんは「なぜ企業はお客さんの立場になって考えることができないのか?」という質問がありましたが、お分かりいただけたでしょうか。
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