失態続きのシークレットサービスから見えてくる、米国のもう1つの“顔”:伊吹太歩の時事日想(1/3 ページ)
米国の大統領警護を担当するシークレットサービスの長官が辞任した。この辞任はシークレットサービスの失態によるものだが、こうした失態は今に始まったことではなく、米国人の特徴を浮き彫りにしているようにも思える。
著者プロフィール:伊吹太歩
出版社勤務後、世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材、夕刊紙を中心に週刊誌「週刊現代」「週刊ポスト」「アサヒ芸能」などで活躍するライター。翻訳・編集にも携わる。世界を旅して現地人との親睦を深めた経験から、世界的なニュースで生の声を直接拾いながら読者に伝えることを信条としている。
10月1日、米国の大統領警護を担当するシークレットサービス(大統領警護隊、USSS)のジュリア・ピアソン長官が辞任した。
シークレットサービスは、1862年に奴隷解放宣言を行ったエイブラハム・リンカーン元大統領により設立され、偽札などを取り締まる機関として始まったものだ。大統領警護を正式に始めたのはその40年後、1902年のことである。
そんな成り立ちから、シークレットサービスは米財務省の管轄組織だったのだが、2003年に米国土安全保障省の管轄に移った。現在は6500人ほどの職員を抱え、大統領や訪問要人の警護だけでなく金融犯罪などの捜査も行っている。
彼らの主な任務は、米国大統領をはじめとする高官らの命を守ること。だが、最近になって彼らの失態が相次いで発覚している。
まず、9月19日にナイフを所持していた元米兵士に、米国で最も警護が厳重だと思われているホワイトハウス内部への侵入を許して大騒ぎになった。さらに、その約10日後にはジョージア州で前科持ちの男性がバラク・オバマ大統領と同じエレベーターに乗っていたことが判明。
さらには、2011年に3発の銃弾がホワイトハウスに撃ち込まれ、数日間誰も気づかなかった事件も明らかになっている。ホワイトハウスのガラスに残った銃痕が米メディアで報じられたが、防弾ガラスを貫通してはいないものの、その生々しさが大きな話題になった。また、そもそもホワイトハウスを狙撃できること自体が驚きを持って受け取られた。
ピアソン長官はこうした一連の不祥事の責任をとって辞任したわけだが、初の女性長官として鳴り物入りで就任しただけに、政権にとって痛手だったのは間違いない。彼女は、シークレットサービスのスキャンダルで堕ちていた評判を改善することを期待されて長官に指名されたのだが、皮肉なことに、結局はスキャンダルに足をすくわれた形になってしまった。
彼女の就任理由からも分かる通り、シークレットサービスの失態は今に始まったことではない。過去には笑ってしまうようなひどいスキャンダルも多発していた。世界における「米国」のイメージがそうであるように、威厳がありマッチョで妥協を許さないイメージが強い“凄腕集団”の失態は、米国のもう1つの「顔」を映しているように思う。
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