米国が日本の“足かせ”になる時代がすぐそこまで来ている?:伊吹太歩の時事日想(1/3 ページ)
国力、国際的な影響力が低下し続けている米国。イスラエル、パレスチナ間の紛争でも影響力の低下を露呈してしまった。しかしこれは、日本にとっても他人事ではない。米国が、日本にとって“足かせ”になってしまう危険性があるためだ。
著者プロフィール:伊吹太歩
出版社勤務後、世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材、夕刊紙を中心に週刊誌「週刊現代」「週刊ポスト」「アサヒ芸能」などで活躍するライター。翻訳・編集にも携わる。世界を旅して現地人との親睦を深めた経験から、世界的なニュースで生の声を直接拾いながら読者に伝えることを信条としている。
米国のダメさを浮き彫りにするような調査や報道を、最近あちこちでよく目にするようになった。
特に分かりやすいのが、米ワシントンDCを拠点とする非政府組織、平和基金会(The Fund for Peace)が6月に発表した2014年版の「脆弱国家指標(参照リンク)」だろう。この指標は、国家の不安定さを12種類の指標で点数化したもので、世界178カ国がランク付けされている。このランキングで“世界最強の民主主義国家”であるはずの米国は、下位10カ国に入れず159位となった(順位が高いほど不安定な国家)。さらに「前年比でスコアが悪化した国家ランキング」のトップ10に入っている。
この結果を受け、各メディアがその理由を分析したが、それぞれ的確な分析だった。まず第一に、連邦議会がねじれ状態でほぼ機能していない。2013年に議会が通した法案の数はわずか67件で、これは記録が残る1947年以降最低の数である。さらに2013年10月には予算審議で与野党が対立し、一部の政府機関が閉鎖された。80万の公務員が一時的に解雇され、政府が機能しない事態に陥ってしまったのだ。
経済面も厳しい。リーマンショック以降、経済がなかなか復活せず、今も5000万人が「貧困ライン(4人家族で世帯年収が2万3429ドル以下=約240万円以下)」で生活している。そして、米国人のうち4700万人が、生活保護者のために政府から発行される食料配給券を受け取らないと生活できないのが現実だ。
こうした例を見ると、他国のことながら米国は大丈夫かと思ってしまうが、さらに深刻なのは国際的な影響力である。
国際的な影響力が低下し続ける米国
現在、世界の注目を浴びているイスラエルとイスラム原理主義組織ハマスの衝突。パレスチナ自治区ガザ地区を中心に、死者数ばかりが増え、停戦合意があっという間に破られるなど、終息する様子は一向に見えてこない。
だが衝突や停戦といった一連の動きから、はっきりと見えたことがある。世界、特に中東地域で、米国のオバマ政権が影響力を発揮できない現実だ。これまで、世界の秩序を(いい意味でも悪い意味でも)保つ影響力を誇っていた米国は、国際情勢においてもその立場が危うくなっている。
もちろん、これまでもオバマ政権のダメっぷりは、チュニジアやエジプトから始まった民主化運動「アラブの春」から、シリア内戦やイラクのイスラム過激派組織の台頭、さらにはウクライナ紛争に端を発する民間機撃墜事件でも露呈されてきている。だが、今回のイスラエルとパレスチナの停戦交渉で、影響力のなさが決定的になったのではないか。そして、これは日本にとっても“対岸の火事”ではない。
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