失態続きのシークレットサービスから見えてくる、米国のもう1つの“顔”:伊吹太歩の時事日想(2/3 ページ)
米国の大統領警護を担当するシークレットサービスの長官が辞任した。この辞任はシークレットサービスの失態によるものだが、こうした失態は今に始まったことではなく、米国人の特徴を浮き彫りにしているようにも思える。
シークレットサービス、失態の歴史
もともと、ピアソンの就任を後押ししたシークレットサービスのスキャンダルとはどのようなものだったのか。
発端は、2012年にコロンビアで開催された米州首脳会議で、米大統領警護のためにコロンビアに前乗りしていたシークレットサービスが“羽目を外した”ことだった。大統領警護の任務にあったエージェントのうち13人が売春婦と夜を過ごして問題を起こしたことがメディアで報じられたのだ。さらに、そのうちの1人が翌朝支払いを拒否したことなど、詳細が次々と報じられるうちに大きな騒ぎになった。
米議会などが問題視したのは、「もし女性たちがスパイやテロリスト、麻薬カルテルの構成員だったら、事はあまりに重大だ」ということ。大統領警護の詳細や、大統領の予定などが漏れたりすれば、大統領の安全が脅かされる。
しかし、シークレットサービスのスキャンダルはそんなものでは終わらない。実は2011年にも、大統領が休暇を過ごす予定だったマサチューセッツ州のマーサズ・ヴィニヤード島で、拠点として家を借り上げていたシークレットサービスのエージェントが朝の4時まで盛大なパーティーで盛り上がり、近隣住民を激怒させて警察沙汰になった。しかもバーで一般市民と喧嘩した者までいたという。
このほかにも、2013年にはホテルのバーで知り合った女性の部屋に、所持していた拳銃の銃弾を置き忘れたエージェントが問題になったり、2014年には大統領警護で前乗りしていたエージェントが飲み過ぎてホテルの廊下で寝ていたことで任務を解かれ、強制帰国させられたり、さらに同年、フロリダで警護のスナイパーが酷い二日酔いだったことが報じられたこともあった。過去には、証拠として押収した3000ドルをネコババしたエージェントもいたという。
死傷者を出したスキャンダルもある。2009年から2010年にかけて、ジョー・バイデン副大統領を誘導する車列が、カナダや米メリーランド州、ニューヨーク州でいくつもの事故を起こし、死者・負傷者を出していた。ちなみに、その2009年には大統領の晩餐会に招待状なく侵入したカップルがオバマ大統領と談笑までしていたことが発覚して大騒動になっている。
シークレットサービスの失態の歴史は古い。ジョン・F・ケネディ元大統領が暗殺された前日、シークレットサービスのエージェントが決まりに反して飲酒していたことが問題視されたこともあった。
“エージェントも人間”と言ってしまえばそれまでだが、勤務中の1週間くらいは酒を控えめにすることぐらいは護衛のプロフェッショナルとして当然かとも思う。「緊張感のある仕事だから、飲まずにはいられない」ということなのだろうか。
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