CSで敗退した広島カープは何を逃したのか 球団が描いていた“2つの皮算用”:臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(3/4 ページ)
プロ野球のクライマックスシリーズ(CS)で、広島カープが敗退した。球団側はファンの熱い支持を受けながら23年ぶりのリーグ優勝を悲願としていたが、同時に「2つの皮算用」を目論んでいた。それは……。
もう1つの誤算
皮算用をしていたカープ側の誤算は、もう1つある。今オフのメジャーリーグ移籍が有力と言われながら結局来季も残留することになったエース・前田健太投手についてだ。
球団側は当初、早ければ海外FA権を取得する2017年を前にメジャー移籍を熱望する前田をポスティングシステム(入札制度)で今オフに放出する方針だった。FAとなるとビタ一文のもうけもなくタダで逃げられてしまうが、ポスティングシステムならば移籍先のメジャー球団から当該選手を保有する所属球団に譲渡金が支払われるからだ。
昨年オフに同制度を利用して田中将大のメジャー移籍を容認した楽天は譲渡金上限額の2000万ドル(約21億4000万円:1ドル:107円換算)を移籍先のヤンキースから手に入れた。前田も“ネクスト・タナカ”として注目されていただけに譲渡金上限額の2000万ドルを懐に入れられるだろう――というのが、カープ側の当初の読みだった。
ところが、これがフタを開けてみると大幅に狂ってしまっていたのである。海の向こうから「前田が今オフにポスティングシステムを行使しても、入札するメジャーの球団はまばら。しかも譲渡金は1500万ドル(約16億円)が精いっぱいで下手をすれば1000万ドル(約10億7000万円)を下る可能性がある」との衝撃情報が今季中盤ころ、カープ側にもたらせられたのだ。
「前田が年間200イニングを投げるポテンシャルを持つ優れた投手であることは間違いない。しかし今年はレギュラーシーズン中、メジャーでは当たり前とされている中4日登板が結局一度もなかった。田中やダルビッシュ(レンジャーズ)、黒田(ヤンキース)、岩隈(マリナーズ)、上原(レッドソックス)のクラスと比較すると、今年のパフォーマンスを見る限りでは残念ながら前田は彼らよりも数段劣る。
米メディアの中にはボストングローブ紙のように『前田がメジャー移籍を決意すれば、多くの球団が満額の譲渡金を用意して争奪戦になる』と報じたところもあったが、実際のところ前田獲得に名乗りを上げるメジャー球団は少ないだろう。そうなれば争奪戦にはならないし、獲得する球団は譲渡金をできるだけ低く抑えようとするのは当然の話だ」とア・リーグのスカウトも前田が意外にも低評価であったことを明かし、その裏事情を細かに打ち明けた。
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