ファストフードの時代は終わった? 変わりゆく米国の食事情:人に話したくなるコラム(2/4 ページ)
米国のファストフードと言えば「マクドナルド」を思い浮かべる人も多いのでは。米国のみならず、世界中の食文化に大きな影響を与えてきたファストフード・ビジネスが、いま大きく変わろうとしている。
チポートレが注目されている理由
では、なぜいまチポートレが注目されているのだろうか? それは、チポートレがファストフード業界の常識をくつがえす独自の発想で急成長していることにある。
長らくファストフード業界では、できるだけ安く食材を手に入れ調理を一貫化してコストカットをすることで、商品の低価格をキープしてビジネスを行ってきた。だが、チポートレを代表とする「ファストカジュアル」は、高級感のあるダイニング環境と高品質のフードをファストフードのフォーマットで提供する、カジュアルレストランとファストフードの中間という位置付けだ。チポートレは新たなファストフード・モデルを切り開いているのだ。
まず、低価格が当たり前になっているファストフード店に対して、チポートレは商品単価が高めだ。マクドナルドやタコ・ベルなどではセットメニューが約2ドルから買えるのに対し、チポートレは約7ドルもする。強気の価格設定だ。
その理由は、チポートレが食材にコストをかけているからだ。同社は「Food with Integrity(誠実な食)」という独自の哲学に重点を置いている。店舗で使用する食材がどのように栽培または飼育されているかを理解したうえで、提供する商品をよりよいものにしていく意図が込められている。そのため、食材は可能な限りオーガニックでそろえ、フレッシュな材料を地元の家族経営農家から仕入れたり、抗生物質やホルモン剤を使用しないで育てられた肉類を使用するなど、環境や動物そして地元農業の持続性に配慮した高品質の食材を調達することにコミットしている。
チポートレが食材のクオリティにこだわる理由は、創業者のユニークな経歴にある。創業者のSteve Ells(スティーブ・エリス)氏は、米老舗料理学校のCIA(Culinary Institute of America)を卒業し、サンフランシスコの超有名レストランで働くシェフだった。だが当時、彼が食べていたのは、安上がりでボリュームのある人気メキシコ料理店のブリトーだった。
エリス氏は少人数の従業員が、ブリトーを求めて並ぶ長蛇の列をサクサクさばく様子に常々感心していた。そこで、安くて、回転率がよく、しかも味と品質では他のファストフード店に負けないモノを提供するビジネスアイデアを思いつく。その後、彼の地元であるコロラド州に戻り、1993年に立ち上げたのが「チポートレ・メキシカン・グリル」だった。
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