「下克上寸前」まで上り詰めた、阪神・和田監督に潜むチカラ:臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(2/3 ページ)
阪神タイガースが日本一の座を逃した。就任3年目の和田監督は口数が少ないので、メディアで取り上げられる機会は少ない。どんな人物なの? と思っている人が多いかもしれないが、虎の指揮官は類まれな“図太い神経”の持ち主なのだ。
阪神監督の重圧
「和田という男は、ある意味でたいしたものですよ。彼は、とにかくタイガース愛がハンパじゃない。『このチームを強く成長させるのは自分しかいない』という使命感を持っている。監督業もやりたくて、やりたくて仕方がないんだ。うがった見方をすればやや自意識過剰で今で言う『KY』的なところもあるが、タイガースの監督なんていう激務はそれぐらいの図太い神経がないと、とてもじゃないが務まらない。
よく考えてみてほしい。あの星野(仙一元監督)だって結果(就任2年目の2002年にリーグ優勝)を出したけど、その後は試合中にベンチ裏で嘔吐するほど体調不良に追い込まれ、たった2年で阪神の監督から退いた。タイガースの指揮官を務めるということは、それぐらいの重圧とも戦わなければならないんだ。そういう厳しい重責を担おうとする人物が今はほとんどいないだけに、和田のように強い使命感を持つ監督は今のタイガースにとって貴重な存在と言える」
確かに阪神監督の重圧はすさまじい。お膝元の関西メディアは勝てばお祭り騒ぎで持ち上げるが、逆に負けが続けば一転して猛バッシングを開始する。前出の人物を含めた有力OBたちの“口撃”も舌鋒の鋭さは他球団と比較にならないほどだ。
それだけではない。球団の親会社・阪急阪神ホールディングスの株主総会では、出席者の株主からチームの調子が悪ければ指揮官への批判や解任要求が飛び出すこともしばしば。そういう環境下で和田監督は就任3シーズンの間で何度も批判の矢面に立たされ、今年もレギュラーシーズン終盤で首位争いから脱落したことで各方面から「クビにすべきだ」などと散々叩かれた。
それでも和田監督は耐え忍んだ。続投条件とされていた今季リーグ2位の座を何とか死守し、坂井信也オーナーから「来季もやってもらう」とゴーサインが出されると満面の笑みを浮かべながら報道陣に「CSで巨人に必ずリベンジします」とも言い切った。
関連記事
- 松坂大輔がどんなに落ちぶれても「メジャー」にこだわる3つの理由
2013年8月、メジャーリーガー・松坂大輔のニュースが久しぶりに話題となった。自ら3Aを退団し、登板機会を求めてニューヨーク・メッツへと移籍したのだ。 - 巨人優勝の裏で……。年俸440万円、厳しい生活を送る二軍選手たち
プロ野球セ・リーグで巨人がリーグ3連覇を達成した。祝勝会に参加できた選手はごくわずかで、同じ巨人の一員であっても普段と変わらない生活を送っている選手がたくさんいる。そんな彼らの生活とは……。 - 市民球団「広島東洋カープ」、徹底した黒字追求型経営の姿勢とその裏側
今年は23年ぶりのリーグ制覇か! 「広島東洋カープ」ファンの“赤ヘル旋風”が巻き起こっている。市民球団のイメージが強い同球団だが、実は「39年連続で黒字」を達成している、徹底して黒字を追求する経営方針の企業である。だが、その裏に「知られざるカープ」の一面もある。 - 年俸6億5000万円は、本当に「高い」のか? ベテラン「イチロー」の価値
天才バッターが岐路に立たされている。新戦力下のヤンキースでは「開幕スタメン落ち」で「外野手の5番手」という扱い。ただ、一方では「他のどんな選手にも勝る」と高い評価を受けている。この“ベテランの価値”をビジネスの現場になぞらえながら再認識しよう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.