クリエイティブなコンピュータは出現するか?:今どきの人工知能(2/2 ページ)
気付きや仮説を設定するという“クリエイティブ”な行為は、人間の大きな能力です。人工知能に膨大なデータを蓄積させることによって、いつの日か、人間のように「気付く」ようになるのでしょうか?
キャッチコピーは作れるか?
塩野: 気付きや仮説を設定する行為は、人間の大きな能力だと思っています。そしてその先には、クリエイティビティ、広告の分野ならデザインとかキャッチコピーを作るような話につながると思うのですが、人工知能はいつかキャッチコピーを作れるようになるのでしょうか?
松尾: 作れると思います。あるキャッチコピーがどれくらいの人に受けそうかは、いまはいろいろな形でテストできます。Webの場合、「A/Bテスト(※2)」とか「タイムライン解析」などの手法がありますが、あるバージョンを置いて反応を見ていくやり方です。キャッチコピーくらいでしたら、それほど深い知識はなくとも言葉の組合せで作っていけますから、それをいったん提示し、反応を見て手直ししていくような処理は、人工知能にもできるようになるでしょう。
ただ、広告の全体デザインを決めるとか、映画の宣伝文、短編小説など長めのコンテンツにどこまでこの手法が使えるかは、これからの研究次第ですね。ここはいまから面白くなっていく分野だと思います。
星新一のショートショートが書ける
塩野: その方向を伸ばしていけば、いつの日か小説も書けますか?
松尾: それは人工知能が作った小説に対して、どれくらい評価をしてくれる人がいるか、どれだけの人が小説と認めるかどうかに依存する話だと思います。
実はいま人工知能学会でも、星新一(※3)のショートショートを書くプロジェクトが動いています。
塩野: なんと! それは例えば、星新一の短編をすべて読み込んで、ストーリーをパターン化し、その中から面白そうなものを再構成して出力するようなやり方ですか。
松尾: 大筋はそうです。難しいのはやはりストーリーの生成。ストーリーのレベルでどんな展開にしたらいいかを把握し、それを新しい物語として作り出すところが非常に難しい。
単語レベルで、この言葉が多く使われる、この単語の後はこの言葉が続く、といった解析は簡単です。一見すると星新一風のつながりはできますが、ストーリーとして見たときに、「面白いね、星新一らしいね」と言われるまでになるには、相当高いハードルがあると感じています。
塩野: なるほど。パーツを集めていって一通りの流れはできても、全体として良いものができるとは限らない、ということですか。合成の誤りやゲシュタルト心理学のような。
松尾: そうですね。それに近い。パーツから抽象化されたものとして、「登場人物」「登場人物間の関係」「新しい出来事」などの要素があって、それらの変化がストーリーだと思います。抽象化して考えることは、いまのところコンピュータが苦手とする部分ですから、「星新一のストーリーにはこんな展開が多い」みたいな捉え方、理解が難しい。
塩野: よくあるパターンの抽象化が難しいということですね。
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