「頭から氷水」の次に来る “MOVEMBER”チャリティって何だ:人に話したくなるコラム(2/4 ページ)
今、海外で大きなブームが起きているチャリティ・チャレンジをご存じだろうか。それは「アイスバスケットチャレンジ」でも、「ピンクリボン運動」でもない。日本にはまだ上陸していないチャリティ「MOVEMBER(モーベンバー)」とは……。
MOVEMBERが成功を収めている理由
MOVEMBERが大成功を収めている理由のひとつとして挙げられるのは、「ひげ」というシンプルかつパワフルなアイコンをうまく利用していることがある。男性特有の特徴であり、非常に分かりやすい。周りの誰かがチャレンジしていたら、顔にあるひげは目につきやすいし、思わずつっこみたくなってしまうのだ。そこから会話が生まれ、「ひげを伸ばす」キャンペーンが歩く広告掲示板のような効果を発揮している。
だが実のところ、「MOVEMBER」は最初から計算して「ひげ」をキャンペーンに採用したわけではないようだ。実は、まったくの逆で、この活動の始まりは、2人のオーストラリア人がバーでビールを飲みながら、「ひげ」を生やすトレンドを復活させるのはどうかというジョークで盛り上がったのがきっかけになっている。
そのジョークのような話を実現し、さらに価値のあるものにするため、メンズヘルスの啓蒙活動をプラスしたというのが、このチャリティ・チャレンジのそもそもの成り立ちだった。しかし、そのとってつけたような理由付けこそ、MOVEMBERが成功したもうひとつの重要なポイントになっている。
というのも、いままで男性特有の健康問題というのは、一般的に語られてこなかった。前立腺がんは、英国や豪州で男性が癌(がん)と診断される部位のトップだ。また、睾丸がん(精巣がん)は、非白人男性の間ではまれな癌ではあるが、米国では15〜35歳の若い男性の間で最も多い癌となっている。
また、男性はストレスにも弱いと言われる。自殺をする人の多くは男性だというのは統計がある。MOVEMBERの資料によると、英国では2011年に自殺した人の75%は男性で、自殺率が高いのは30〜44歳だという。米国でも、男性の自殺者の数は女性の4倍以上になっている。
このようにごく身近な問題にもかかわらず、大々的に男性の健康問題を取り上げた活動はなかった。そこにスポットを当てたことは、かなり大きな要素になっている。要するに、ありそうでなかった分野にうまくはまったということだろう。
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