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自治体首長選挙公約に変化あり! 「鉄道存廃」から「活性化」へ:杉山淳一の時事日想(3/4 ページ)
衆議院解散と総選挙が決まり国政がざわつき始めた。それよりひと足早く、11月16日に各地で自治体首長選挙が行われた。このうち5つの選挙の当選者が鉄道の活性化を公約に掲げている。自治体にとって鉄道の価値が高まっているかもしれない。
松山市長選挙――伊予鉄道の松山空港延伸計画
愛媛県知事選挙に合わせて、県庁所在地の松山市長選挙も実施された。現職知事との連携をアピールした現職市長の野志克仁氏が再選となった。野志氏の公約には「路面電車と郊外電車のシームレス化と空港延伸」とある。松山市を地盤とする私鉄の伊予鉄道は、「坊ちゃん列車」でも有名な路面電車と郊外線(普通鉄道)の両方を運営している。現在はそれぞれ独自の運行をしているけれど、路面電車も郊外電車も軌間は1067ミリメートル、車両基地はどちらも古町駅にある。
「路面電車および郊外電車のシームレス化と空港延伸」は、知事に当選した中村氏の公約である大手町線新設と連動している。大手町線は松山市中心部から高架化した松山駅を通って西側に進む。これをさらに延伸して松山空港へ接続する計画だ。全区間を路面電車にすると速度を上げられないから、郊外電車規格も乗り入れたいわけだ。
松山空港はJR松山駅からバスで約15分、市の中心部からバスで20分の距離。地方都市の空港としては中心部に近いと思われるけれど、鉄道計画が実現すれば松山市はさらに便利な都市となるだろう。坊ちゃん列車で空港まで行けたら面白い。
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