魅力いっぱい、だけど認知度低すぎ? 「伊予灘ものがたり」に乗って分かったこと:杉山淳一の時事日想(4/4 ページ)
年初に「2014年の鉄道旅は四国だ」と書いたけど、いまひとつ盛り上がりに欠けた。そこでJR四国の観光列車「伊予灘ものがたり」に乗ってみた。予測した通り満足度の高い旅だった。ただし、回遊性と発信力についてはさらなる努力が必要と感じた。
食事メニューが少ない、宣伝も不十分
私が乗った伊予灘ものがたりは半分の座席が空いていた。これも残念なところ。良い列車を走らせていてもお客が集まらない。乗車日は11月の勤労感謝の日で、連休の行楽日和である。デビューして半年も経たないわけで、集客が落ち着くには早すぎる。その原因は一言で「発信力不足」に尽きる。
まず、食事システムが正しく伝わっていない。食事メニューのない道後編以外はすべて食事メニューがあるので予約が必要な印象を受ける。これでは、私のような偏食者には厳しい。実際は食事なしで乗車しても構わないし、どの列車にもカフェメニューがある。ビールとソーセージを注文して心地よく酔ってもいいし、スイーツとお茶、ソフトドリンクだけでも車窓を楽しめる。これが伝わるだけでも集客は増えそうだ。
ただし、JR四国としては食事込みで集客したい考えだろう。ならば、選択肢がほしい。飛行機の機内食だってメインは2種類から選択できる。日本人すべてが刺身好き、海老フライ好きではない。肉料理や野菜料理の選択肢がほしい。予約制だから対応できるはずだ。これは伊予灘ものがたりだけではなく、予約制の食事付き列車すべてに言えることだが。
東京、大阪、福岡、札幌など大都市への宣伝は十分だろうか。申し訳ないけれど、列車の宣伝にとどまっては、多くの人々にとって運行区間がピンとこず、旅をイメージしにくい。
そこで提案したいルートは、伊予灘ものがたりと予土線を組み合わせた回遊ルートだ。JR四国にとって予土線は奥座敷。付近に空港がないから、最寄りの空港から予土線までは必ずJR四国の他の路線を利用するだろう。そうなると、高知空港からも松山空港からも、ほどよく特急列車に乗ってもらえる距離である。
つまり、予土線に集客すれば、前後の特急列車にも乗ってもらえるわけだ。JR四国はそれを知っているから予土線を盛り上げていると思う。もし奥座敷の立地に気付かず、イベント列車を走らせるには手頃な路線だという理由だけなら、もったいない話だ。
松山空港から松山駅はリムジンバスで15分と近い。何といっても道後温泉がある。鉄道ファン的には「坊ちゃん列車」もある。そして、伊予灘ものがたりと特急列車で宇和島へ、さらに予土線へ。窪川駅へ出れば特急に乗り継いで1時間で高知だ。とさでん交通と坂本龍馬の高知である。このルートでスムーズに乗り継げるダイヤを設定すれば、個人の旅行者だけではなく、旅行会社にもツアーを提案しやすくなるだろう。
両空港に乗り入れる航空会社とのタイアップもできそうだ。鉄道なら、東京からサンライズ瀬戸で終着駅の高松、あるいは瀬戸大橋を渡った坂出駅から新型特急電車8600系で松山へ向かうルートだって魅力的。以前実施されたように、サンライズの松山延長も望みたいところ。当時と違って、今は伊予灘ものがたりと予土線が魅力を放っている。
回遊ルートで提案すれば、メディアだって食いついてくるはず。どうして誰もやらなかったんだ。あれ、もしかしたら私の役目でもあったか。ということは、今年7月に伊予灘ものがたりがデビューしたとき、この記事を書いて応援すべきだった。ごめんなさい。
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