魅力いっぱい、だけど認知度低すぎ? 「伊予灘ものがたり」に乗って分かったこと:杉山淳一の時事日想(3/4 ページ)
年初に「2014年の鉄道旅は四国だ」と書いたけど、いまひとつ盛り上がりに欠けた。そこでJR四国の観光列車「伊予灘ものがたり」に乗ってみた。予測した通り満足度の高い旅だった。ただし、回遊性と発信力についてはさらなる努力が必要と感じた。
期待通りの満足度
乗車した感想は「大満足」であった。良い列車である。室内の雰囲気も良いし、ゆったりと座れる。もっとも国鉄時代の気動車のリフォームだから、調理設備は期待できないと思っていた。しかし、温かい味噌汁が出た。新鮮な野菜サラダのほか、メインのプレートは常温だけどおいしく、甘みのある濃厚な味噌汁と食後のコーヒーの組み合わせで満たされた。
車窓も伊予灘の景色をたっぷりと見せてくれる。その後は肱川(ひじかわ)沿いに山岳部へ。ちょうど紅葉の時期もあってこちらも景色が良い。紅葉の時期を外しても、川沿いの山の風景は四季のいつでも素晴らしいだろう。乗務員の風景解説や接客も行き届いていた。
観光列車の車内で食事といえば、JR九州の「ななつ星in九州」(関連記事)を思い浮かべる人もいるだろう。そして、その値段と予約の取りづらさに引いてしまう。ななつ星in九州には手が届かないけれど、同じJR九州の「海幸山幸」「指宿のたまて箱」(関連記事)には乗った。どちらも手頃で楽しかった。JR四国の伊予灘ものがたりも同等かそれ以上の価値がある。乗車時間は短くて安いけれど、リッチな旅を楽しめる。
その後、私は伊予灘ものがたりから特急に乗り継ぎ、宇和島からは終日予土線を往復して、鉄道ホビートレインや「海洋堂ホビートレイン」、「しまんトロッコ」の旅を楽しんだ。
四国の鉄道の旅、面白いじゃないか。もっと話題になっていいのに。新幹線50周年の影響で鉄道ホビートレインはたびたび話題になったけれど、それだけしか紹介されないなんて残念すぎる。また、私のように先へ進まず、ホームの反対側に到着した松山行の特急列車で引き返してしまう姿もいくつかあった。伊予大洲駅から外に出てくれないなんて。出迎えの地元の方々もがっかりだろう。
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