会社が社員を「管理」することで、社員の働くモチベーションが向上する時代?:サカタカツミ「新しい会社のオキテ」(2/2 ページ)
2015年、会社の組織論や人材育成法はどう変わるのか。サカタさんが注目するのは組織内の可視化と、さらにそれを「管理」すること。一見ネガティブにも見えますが、実はこれによって社内のさまざまな問題が解決される可能性があると言います。
極限まで無駄を省くための「管理」が求められる
例えば、早期離職する人が「なぜ退職するのか」という原因が分かれば、企業はその人を採用する「無駄な行為」をしないでしょう。しかし今までは、退職する原因は、ケースバイケースだと(勝手に)思い込んでしまっていて、手を打ってこなかった。しかし、企業の中の多くの部分が可視化できれば、その原因が見えるかもしれません。
例えば、採用時の広告のクリエイティブと早期離職には、関係があるかもしれない。上司のタイプによって、その従業員の学歴によって、配属された職場の人間関係によって……理由はいくつも考えられるはずです。そういうデータをすべて取って整理することによって、早期退職が発生した「意外な理由」が見えてくる可能性は高いのです。
職場にストレスを感じてメンタルヘルスが不調になり、結果的に働けなくなる人たちも、その従業員個人と周囲の数人の関係に原因を求めてしまうのは簡単ですが、もっと別の要因があるかもしれない。必要なスキルを備えた人を採用して配属したはずなのに、期待するパフォーマンスを発揮しないというケースでも、その従業員に能力がなかったという以外の原因も考えられます。しかし、いまの管理の仕組みでは、その原因がなかなか見つけ出せない。
数多くのデータを集めて、企業という組織がどのようになっているのかを可視化することで、その組織に向いていない人は採用しない、採用した人を有効に活用する適材適所な配属ができる、結果として無駄を極限まで省くことができる、そんな可能性がかいま見えるのです。
新しい「管理」の形で、個人が幸せに働ける時代が来るかもしれない
「自分には能力があるのに、組織がうまく活用してくれない」という従業員が抱えているジレンマは、企業には分かりません。上司に訴えたとしても、現状、それに対処する仕組みはないですし、訴えたところで「今の場所で頑張れ」という、使い古されたフレーズの励ましが返ってくるのが関の山。今いる場所で、与えられた役割を全力で果たすことももちろん大切ですが、企業サイドから見れば、文字通り宝の持ち腐れですし、従業員にしてみればモチベーションが維持できない可能性が低くありません。
今いる組織に順応できない場合でも、その従業員に問題があるとは必ずしも限らない。しかし組織内の人のつながりや、相性が可視化され、管理されている状態だと「すべての人と仲良くするのも仕事のうちだ」という、現実には難しいことを我慢しなくて済む……そんな可能性も出てきます。「相性」という言葉があるくらいですから、その組織の中で相性の良い組み合わせを探し出し、最大限の能力を発揮できる環境を、企業は整えるために管理する――という考えも出てくるでしょう。
企業で行われている研修も、その効果が厳密に測定されるようになったら、慣習として実施されていたけれども、意味のないものはなくなるでしょうし、評価にしても、上司の評価を評価する(評価者が正しい評価をしているのかというテストは、もうすでに存在します)仕組みがきちんと行き届けば、不公平感はなくなり、働くモチベーションは向上するかもしれません。
まあ、すべてが上手くいくとはとても思えませんし、組織の中でデータを取る、可視化するという仕組みがシンプルにならないと、働く人の負担が増えて本末転倒になりそうです。しかし「管理」という一見ネガティブな言葉が、2015年に”会社のオキテ”を新しくするキーワードになるだろう。そう私は思っています。
著者プロフィール:サカタカツミ
クリエイティブディレクター。就活や転職関連のサービスをプロデュースしたり、このような連載をしていたりする関係で、そちら方面のプロフェッショナルと思われがちだが、実は事業そのものやサービス、マーケティング、コミュニケーションの仕組みなどを開発するのが本来の仕事。
直近でプロデュースしたサイトは「CodeIQ」や「MakersHub」。著書に『こんなことは誰でも知っている! 会社のオキテ』、『就職のオキテ』。この連載についても、個人的に書いているブログでサブノート的なエントリーを書く予定。Twitterアカウントは@KatsumiSakata。
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