円高になるかもしれない、欧州の騒動:藤田正美の時事日想(1/3 ページ)
ギリシャのチプラス党首が「現実的な財政再建策についてEUなどと協議するが、これまでの支援条件を反故にする」と発言したことで、欧州が揺れている。党首の発言によってECにどんな不安要素が加わり、日本にどのような影響が考えられるのか。
欧州が揺れている。1月25日に実施されたギリシャの総選挙。争点は「財政再建のために緊縮政策を続けるかどうか」だった。結局、緊縮反対を唱える急進左派が勝利した。チプラス党首はこう述べた。「わが政権は、現実的な財政再建策についてEUなどと協議するが、これまでの支援条件(緊縮政策の実行など)は反故(ほご)にする」
これでまたEU(欧州連合・加盟28カ国)の行く末に大きな不透明要素が加わったことになる。短期的には統一通貨ユーロがどうなるかということ、そして長期的にはEUそのものがさらに前進するのか、それとも後退するのかということだ。
このところEUでは金融政策を巡って激震が走ってきた。ECB(欧州中央銀行)がついに量的緩和を決めたのが1月22日。その1週間前にはスイスの中央銀行が対ユーロ相場の上限を撤廃した。1ユーロ=1.2スイスフランという上限を超えないように介入していたが、それをいきなり止めたのである。これでスイスフランは急騰(ユーロの対スイスフラン相場が急落)し、上限があることを当てにして為替に投資していた投資家は大損をした。
EUの問題は、ひとつにはリーマンショックの余波を抜け切れていないこと。バブルがはじけた結果、経済が停滞して一部の国の借金財政が行き詰まった。そこで大きく財政再建に舵(かじ)を切った英国(統一通貨ユーロには加盟していない)は、いまようやく回復し、金利引き上げも視野に入っている。しかしPIIGS(ピーグス)と呼ばれたポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインなどは国債相場が低迷し、極端に高いプレミアム金利を払わなければ国債を発行できなくなった。それがいわゆるソブリンリスクだ。
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