NFLから学ぶ人材スカウト術:元アメフトプレイヤー・有馬隼人さんに聞く(1/4 ページ)
なぜ米国でアメフトは人気が高いのか。その大きな理由の1つに「ドラフト会議」の面白さがあるのだという。元アメフトプレイヤーの有馬隼人さんに詳しく聞いた。
世界で最も巨額マネーが動くプロスポーツは何だか分かるだろうか。英国のプロサッカー「プレミアリーグ」でも、米国のプロ野球「メジャーリーグ(MLB)」でもない。年間で実に約1兆円の総収入を上げている米国のプロアメリカンフットボール「ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)」が世界一のスポーツ市場規模を誇っているのだ。
例えば、毎年2月に開催するNFLの優勝決定戦「スーパーボウル」でのCM(1本当たり30秒)の広告費は、2014年に過去最高額となる400万ドル(約4億円)となった。
広告費の高さに比例し、当然視聴者数も多い。2014年の視聴率は49.1%で、視聴者数は1億1150万人。全米の歴代テレビ番組視聴率のナンバーワンに輝いたのである。
なぜこれほどまでにNFLは人々を熱狂させるのか。人気の理由について、元アメフト選手で、現在は日本社会人アメフトリーグ「Xリーグ」のアサヒビールシルバースターでコーチを務める有馬隼人さんは「ドラフト」にあるという。NFLのドラフトは、毎年レギュラーシーズンに劣らない注目を集めており、ドラフト会議に焦点を当てた映画「ドラフト・デイ」も日本で公開されている。そうしたNFLのドラフトの魅力などを有馬さんに聞いてみた。
さまざまな葛藤の中で決断するチカラ
――現在(2015年2月初旬)上映中の映画「ドラフト・デイ」では、ドラフト会議を舞台に、NFL各チームのGMたちの新人選手を巡る駆け引きの凄みを描いています。本作の字幕を監修されたということですが、苦労した点などを教えてください。
フットボール用語が多数出てきますので、それをできるだけ一般の方でも理解しやすい言葉に変えて伝えるようにしました。一方で、アメフトをはじめスポーツに詳しい人もいるので、「これは違う解釈だ」と突っ込まれないよう、バランスをとることに気を付けました。なおかつ、字幕は短い言葉で簡潔にしなければいけないので、そこが難しかったです。
あとは独特の比喩や慣用句が出てくるので、これについても前後の会話を見ながら、どのように分かりやすく伝えるか考えました。例えば、日本では相撲が国技なので、「同じ土俵に上がる」とか「寄り切られた」といった言葉を普段からよく使います。同じように米国だと、「4th down gamble」(4回目の攻撃で失敗したら終わりという意味から、賭けに出たときに使う)などアメフトの言葉が日常で出てきます。
――弊誌の主な読者であるビジネスマンに対して、「この映画のここを見てほしい」というポイントはありますか。
主人公の決断力ですね。GMという戦力強化(人材獲得)に関する決断を任されている立場なのですが、オーナーの意見やファンの声も耳に入ってくるので、その葛藤との戦いです。
これはビジネス現場でも同じです。自分自身で決断したくても、上司が何と言うだろうか、顧客が何と言うだろうかという葛藤があるはずです。決定権を与えられたのに、失敗したら後で上司に文句を言われてしまう。
映画では、ファンに対する思いと自分の意思を貫く葛藤を描いていて、最終的に自分の意思を貫くわけですが、そこにさまざまな困難が訪れ、予想外のことが起きます。ビジネスマンにはこのあたりが共感されるのではないでしょうか。
ビジネスマンは役職を問わず、大小さまざまな決断があると思います。そうした場面で自分の信念を貫けるかどうか、そうしたことが究極に描かれています。
関連記事
- 「金持ち球団が強い流れに戻っている」――『マネーボール』のビリー・ビーンGMインタビュー
各種統計から選手を客観的に評価するセイバーメトリクスを用いて、2000年代前半に黄金期を迎えたオークランド・アスレチックス。その立役者で、映画『マネーボール』のモデルともなったビリー・ビーンGMに、導入の経緯を尋ねた。 - ホームチームの勝率が高くなる理由
スポーツでは、ホームチームの勝率が高くなるという現象がよく見られます。その理由は審判にかかる“同調圧力”にあるそうです。 - 市民球団「広島東洋カープ」、徹底した黒字追求型経営の姿勢とその裏側
今年は23年ぶりのリーグ制覇か! 「広島東洋カープ」ファンの“赤ヘル旋風”が巻き起こっている。市民球団のイメージが強い同球団だが、実は「39年連続で黒字」を達成している、徹底して黒字を追求する経営方針の企業である。だが、その裏に「知られざるカープ」の一面もある。 - メジャー飛び級で日本野球界への退路を断たれた男の天国と地獄――田澤純一
「田澤ルール」というものをご存じだろうか。日本のドラフトを拒否してメジャーに挑戦した田澤投手は、帰国しても2年間は日本のプロ野球チームと契約できないのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.