NFLから学ぶ人材スカウト術:元アメフトプレイヤー・有馬隼人さんに聞く(4/4 ページ)
なぜ米国でアメフトは人気が高いのか。その大きな理由の1つに「ドラフト会議」の面白さがあるのだという。元アメフトプレイヤーの有馬隼人さんに詳しく聞いた。
1試合100億円の放映権も
――ところで、NFLの市場規模が約1兆円というのは驚きです。
NFLはレギュラーシーズンに1チーム16試合行います。これを17週間でこなすので、NFL全体で週に16試合しかないわけです。MLBの10分の1程度の試合数です。ポストシーズンもすべて一発勝負なので、圧倒的に試合数は少ないです。それなのに、シーズン通してMLBを上回る市場規模というのはどういうことでしょうか。
放映権に関して、MLBは1試合あたり数千万〜数億円ほどですが、NFLは1試合あたり数十億円、ときには100億円ということもあります。さらには、NFLの場合、FOX、CBS、NBC、ABCの米国4大ネットワークと、スポーツ専門チャンネルのESPNは、何千億円という単位での放映権が10〜12年先まで決まっていると言われています。日本ではあり得ないことですが、こうした取引が当たり前のように行われています。それだけNFLには絶対的な価値があるのです。
――日本でのアメフトのプロ化はハードルが高いかもしれませんが、文化として今後日本でアメフトを普及させていくためにはどうすればいいですか。
ポテンシャルは高いと思います。関西の大学リーグは数万人規模の観客が集まります。僕も大学時代(関西学院大学)は2万〜3万人の観衆の中でプレイしていました。今、国内の大学スポーツで1カ所に数万人を集められるのは、関東のラグビーと関西のアメフトだけです。それを考えると、ポテンシャルは非常に高いスポーツだと思います。
それをどういう風に認知拡大していくかはこれからの課題です。米国では、父と子どもが「キャッチボールしよう」と言うと、野球ボールではなく、フットボールが出てきます。それほどまでに文化として定着しています。そのレベルになるには、日本ではまだまだ時間がかかるでしょう。
――ありがとうございました。
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