NFLから学ぶ人材スカウト術:元アメフトプレイヤー・有馬隼人さんに聞く(3/4 ページ)
なぜ米国でアメフトは人気が高いのか。その大きな理由の1つに「ドラフト会議」の面白さがあるのだという。元アメフトプレイヤーの有馬隼人さんに詳しく聞いた。
――こうした駆け引きというのは、優れたビジネススキル、ビジネステクニックだと思います。NFLのGMというのは実業家だったり、ビジネス界で著名だったりする人が多いのですか。
はい、プレイヤー出身の人はほとんどいません。基本的にはビジネスマンです。GMだけでなく、監督やコーチでもNFLのプレイ経験がない人がいるくらいです。たとえアメフト経験がなくても、コーチとして成功さえすれば評価されるのです。
――NFLで見られるようなスカウティング術は企業ビジネスでも応用できないでしょうか。
参考になると思います。というのも最近、日本企業の人材採用状況が変わってきていると感じています。今までは、企業は募集して待つだけだった。青田買いということもありますが、実は根拠に基づいてなくて、OBが母校を訪問して優秀そうな学生を捕まえてくるだけでした。なぜなら良い大学から良い人材を獲得することがそのOBの評価につながったからです。それが近年にかけてのリクルーティングでした。
しかし現在は変わってきていて、学生や企業の既存社員も含めて、彼らの情報をいかに共有できるかということが重視されています。この人は何をやってきた、何ができる、誰からどういう評価を受けた、何に貢献したなど、いかに多く情報量を持ち、それを確かめるために面接などをするのです。もしくは、採用しようとしている人の周辺を調査し、真実をつかんでから採用につなげていきます。
NFLのスカウティングでは、単に試合の結果だけ、ファンの人気だけで選手を評価せず、ありとあらゆる情報を管理して、それが本当かうそか、当人がどういう思惑を持っているか、周辺の人たちからどのように思われているかを徹底的に調べ上げます。ここまでしないにせよ、企業の人材獲得においても真似できると思います。実際、エントリーシートを書かせて、面接に呼び質問して、丸バツを付けるというだけでは、良い組織は作れないということに気付いています。
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