試乗して分かった北陸新幹線の「ビジネス力」:杉山淳一の時事日想(3/6 ページ)
JR西日本が開催した北陸新幹線試乗会に行ってきた。その体験と、駅や車両の設備、ダイヤ、きっぷなどの情報を基に、ビジネスマンに向けた北陸新幹線の情報をまとめた。北陸新幹線を使った出張は、仕事するも良し、休息も良し。快適な旅になりそうだ。
全席にコンセント、揺れないから仕事もはかどる
モバイルPCといえば、北陸新幹線金沢延伸開業に向けて新造されたW7系/E7系電車は、全座席にモバイルコンセントが1つずつ割り当てられている。これは北海道新幹線向けにJR北海道が導入するH5系と同様だ。H5系のベースとなった東北新幹線「はやぶさ」のE5系は窓の下に1つのコンセントだから、ヨコ並びの乗客によるコンセントを巡る攻防があったかも。でもW7系 E7系はその心配はなさそうだ。窓際席にこだわる理由もひとつ減った。
W7系/E7系の普通車の座席間隔は、E5系/H5系と同じ10.4センチメートルで、「あさま」「やまびこ」などに使われるE2系より0.6センチほど足元が広い。足を組んでもラクだし、ビジネスバッグを足元に置く余裕がある。リクライニング機能は背もたれを倒すと座面の腰の位置が下がり、前方へずれ込みにくい。グリーン車やグランクラスほどではないけれど、くつろげるシートである。
なお、車内設備についてはE7系が「あさま」に先行投入されているから、既に体験済みの方も多いだろう。E7系とW7系の設備は同じ。形式名の違いは保有会社の違いで、E7系がJR東日本(East)、W7系がJR西日本(West)である。今回の試乗はJR西日本が開催したのでW7系だった。W7系とE7系は、車体外観ではロゴマークに添えられた文字の(WEST/EAST)で判別できる。客室内は車内放送のチャイムが判別ポイント。E7系は従来の上越・長野新幹線のチャイムで、W7系は谷村新司作曲「いい日旅立ち 西へ」をアレンジしたチャイムになっている。自動放送の音声はどちらも元フジテレビアナウンサーの堺正幸氏。堺氏はJR東日本の新幹線のすべてを手掛けているおなじみの声である。
試乗した金沢駅〜長野駅間の車中は揺れが少なく快適だった。新幹線の揺れは座っていると気にならないけれど、通路を歩いていると気になることが多い。揺れてふらつき、思わず背もたれに手を掛けてしまい、その席でくつろぐ人の顰蹙(ひんしゅく)をかう。しかし、今回の試乗区間ではカメラを抱えながらもふらつくことなくラクに歩けた。
試乗列車では普通車に案内され、スケジュールに従って関係者へのインタビュー用車両、グリーン車、グランクラス車両へと何度か移動した。通路を逆方向に歩いてくる人とすれ違うときもスムーズだ。座席の肩部分に握り手があるけれど、そこに手を掛ける必要がなかった。そのせいで、握り手に施された点字案内という配慮に気付かないほど。座っているときの揺れの少なさは、モバイルPCの画面を見つめたり読書したりするときに助かる。グリーン車とグランクラスは座席ごとに読書灯を装備している。
シートピッチの広さ、コンセントの数、揺れの少なさなどから、「北陸新幹線の車中はモバイルPCの作業に専念しやすい」と言える。東京都内〜金沢市内間の所要時間で飛行機と新幹線が互角だとすれば、設備やバスなどの乗り継ぎのないぶん、モバイル作業環境として新幹線に軍配が上がる。ただし、北陸新幹線で残念なところは、約4割のトンネル区間と地上区間の人家の少ないところで携帯電話の電波が届かない。JALの羽田〜小松線は有料でWi-Fiによるインターネット接続が可能だ。北陸新幹線にも、東海道新幹線のようなインターネットサービスがほしい。
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