試乗して分かった北陸新幹線の「ビジネス力」:杉山淳一の時事日想(4/6 ページ)
JR西日本が開催した北陸新幹線試乗会に行ってきた。その体験と、駅や車両の設備、ダイヤ、きっぷなどの情報を基に、ビジネスマンに向けた北陸新幹線の情報をまとめた。北陸新幹線を使った出張は、仕事するも良し、休息も良し。快適な旅になりそうだ。
想像以上に景色を楽しめる
新幹線は駅間を直線的に結ぶためトンネルが多い。試乗区間のうち、長野駅〜糸魚川駅間が山岳地帯でトンネルが多く、糸魚川駅から富山県内も“親不知”のような山岳と海岸線が接近する地形はトンネル。全体的に長野駅〜金沢駅間では約4割がトンネルである。最長のトンネルは飯山駅〜上越妙高駅間の飯山トンネルで約22キロメートル。ここは鉄道の山岳トンネルとしては日本で3番目の長さになる。ただ今回、長大なトンネルを何度も出入りしたけれど、耳ツン現象は一度もなし。W7系/E7系電車の気密性能を実感した。
乗車前は「トンネルばかりで景色など期待できないかも」と思っていた。しかし実際はかなり美しい景色を楽しめる。金沢市内の高架区間では白山を望み、富山県内では立山連峰を含む飛騨山脈(北アルプス)を見渡せる。富山県内はトンネルが少なく高架区間が多いので、在来線よりも見晴らしがよい。高架区間は防音壁が付きものだけど、駅周辺には透明素材を使って車窓を楽しめるよう配慮している。これは乗客にとって、到着駅付近の景色を認知してもらうためとも言えるし、沿線への日照権の配慮かもしれない。
黒部宇奈月温泉駅あたりで遠くに海が確認でき、親不知のトンネルを越えると糸魚川駅付近で日本海が近づく。ここから長野駅まではトンネルの比率が高くなるけれど、外輪山を擁した妙高山の堂々たる姿は圧巻だ。北陸新幹線は確かにトンネルが多い。しかし、トンネルを出るたびに地形が変わり、気候も変わり、景色が大きく変化する。東京駅から金沢駅までの2時間半で本州を横断するだけのことはある。ビジネスの出張だとしても、PCで作業するより景色を眺めたほうが心身をリフレッシュできそうだ。新幹線で体を休めた方が、仕事に良い結果をもたらすかもしれない(?)。
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