寝台特急北斗星に乗り続けた画家、鈴木周作さんの「これから」:杉山淳一の時事日想(4/5 ページ)
寝台特急北斗星は1988年3月に運行を開始し、2015年3月に定期運行を終え、8月に臨時列車としての運行も終了する。その27年間で457回も北斗星に乗った人がいる。
北斗星の導きと、「次に成すべきこと」
鈴木さんが北斗星の廃止について冷静な理由は、彼のテーマが北斗星だけではなく、新しいテーマが見つかったからだ。北斗星を絵のライフワークとして、終わりまで見届けたいという気持ちは強い。しかし、画家としての題材や仕事は多岐にわたっている。
東京では鉄道雑誌や私鉄の沿線ガイド冊子、北海道では市役所などのパンフレット、北海道の情報誌『スロウ』に連載を持つ。絵本の仕事も継続しており、海外版も出版されている。水彩画教室の講師も務めておられ、教室の窓から北斗星が見えるそうだ。ダイヤ改正後の臨時列車はほぼ隔日運行となり、土曜日午前の教室からはカシオペアしか見られなくなる。それがちょっと残念だという。
そのなかでも関心の高いテーマは「札幌の路面電車」と「えちぜん鉄道」だ。「札幌LRTの会」に参加し、Webサイトや雑誌「スロウ」で札幌市電の近況を紹介している。「札幌LRTの会」は、札幌に移住する前に東京の書店で同会が編纂した本を読み、ファンになった。その後、市電をテーマに絵を描いていると知った会のメンバーが誘ってくれたという。
「移住者に寛容と言われる土地柄だけに、趣味界では著名な大先輩方が快く受け容れて応援してくれました」と嬉しそうに語る。その様子から、私には、札幌市民として地に足が着いたという、居心地の良さを感じとれた。
「えちぜん鉄道」は福井県だ。東京からはちょっと遠い。北陸新幹線の開通によって金沢乗り継ぎで近くなるけれど、札幌からはもっと遠い。鈴木さんは、同社のカレンダー、時刻表などの絵を手がけている。駅で原画展も開催している。いわばえちぜん鉄道の公認画家である。この縁は「札幌LRTの会」が結んでくれたそうだ。
「福井で『全国路面電車サミット』という催しがあって、札幌LRTの会として参加しました。その時にえちぜん鉄道を訪問し、どこか引かれるところがあって描きました。それを福井でお世話になった社員さんにお送りしたら、社内の多くの方々の目に触れて、社長さんにも気に入っていただけたようで」
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