中国人観光客が「爆買」する日本の炊飯器は何がスゴいのか:窪田順生の時事日想(3/4 ページ)
中国人観光客の爆買によって、日本製の炊飯器が売れている。そんなことを聞くと、「多くの中国人は日本の技術力を高く評価しているんだなあ」と思うかもしれないが、本当にそうなのか。売れている背景を探っていくと……。
日本の炊飯器に必要なこと
ただ、その一方でここまでブランドが確立していることに危うさも感じないわけでもない。今は中国人観光客が爆買してウハウハでいいのだが、このビッグウェーブが過ぎ去った後に、反動でブランド価値が大暴落してしまう恐れがあるのだ。
そういう例がわりとよくある。分かりやすいのが高級ブランドだ。覚えている方も多いかもしれないが、バブル期の日本人も世界のいたるところで爆買をしていた。イタリアフィレンツェのフェラガモ本店のセール日には、日本のOLと女子大生がごった返したのでイタリア人を驚かせた。ニューヨークのティファニーでも、パリのシャネルも同じだった。
あまりにも派手にブランド品を買い漁るので、高級ブランドは「日本人は我々のブランド価値をよく分かっている」なんて勘違いしてしまったのが悲劇の始まりで、こぞって日本進出を果たしたのだが、今にいたるまで苦しい戦いが続いている。もちろん、これはバブル崩壊もあるが、世の中にあまりにも溢れ返ってしまったことで、「手が届かない憧れ」という高級ブランドにとって最も大事な価値が下落してしまったことが大きい。
その象徴が、ヴェルサーチだ。レディガガ御用達として知られ、最近も再上陸を果たしたこの世界的ブランドは、バブル期に流行して、大都市圏には豪華な路面店など多くの店舗があったが、その認知度がゆえコピー商品が横行し、ガラの悪い人たちまでが着用するようになり価値が暴落したことで、もともとのヴェルサーチ好きが潮が引くように消えてしまい、売り上げが悪化。2009年には完全撤退を余儀なくされたのだ。最近、日本から撤退したドルチェ&ガッバーナなんかもこのパターンだ。
そういう歴史の教訓から、日本製炊飯器の爆買という現象を見てみると、これからやってはいけないことが見えてくる。それは「中国人は日本の質の高い炊飯器を求めている」なんて考えて、高機能な炊飯器を中国市場にじゃんじゃん投入をすることだ。世に溢れて誰にでも手が届くようになれば価値がさがる。ヴェルサーチと同じ末路をたどるというわけだ。
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