クラウドファンディングで鉄道遺産を守れ!:新連載・杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/5 ページ)
ビジネスのスタート資金調達として定着しつつある「クラウドファンディング」が、鉄道分野でも活用されている。北海道では有志が電車の保存を呼び掛けて、3日間で300万円以上を集めた。
無謀な計画、だが廃車解体の期限迫る
複数のクラウドファンディングサービスを比較検討した結果、READYFORに申し込んだ。理由は、日本国内で実績があり利用者が多かったこと。そして購入型がふさわしいと考えたためだ。募集者にとっても応募者にとっても分かりやすい仕組みだったことも決め手になった。
READYFORは、日本で立ち上がった初のクラウドファンディングサービス。最近はTVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の名場面を再現するという「ロンギヌスの槍を月に刺すプロジェクト」が話題になった。鉄道関連では2014年11月、「銚子電鉄の事故車両を修理復活させるための高校生のプロジェクト」が成功している。募集開始は無料。ファウンディング成功が確定するまで応募者からの決済も行われない。成立時に発起人が達成金額の17%を手数料として支払う仕組みだ。つまり、ファウンディング不成立だった場合は、募集者も応募者も費用がかからない。
クラウドファンディングには「投資型」「購入型」「寄付型」がある。「READYFOR」は購入型だ。投資型は株式投資に似ており利益の配分を受ける。これは日本の法律では実行しづらいらしい。寄付型は見返りがないため賛同者を得にくい。購入型はお礼としてグッズやサービスの提供ができる。提供するサービス内容によって、鉄道ファンに訴求できる。
711系プロジェクトは、3000円、1万円、3万円、10万円のメニューを作った。すべてのメニューで「参加者の名前を保存車内に掲示」を約束。金額に応じてグッズを用意した。10万円コースはコレクターに供出してもらった実物の「行き先表示板」をプレゼントする。数量に限りがあるため10口限定だが、これが現在9口まで応募されている。鉄道ファンの資金力をうかがわせる結果となった。これには永山氏も驚いているという。
READYFORの担当者からは、約20日間で234万円という計画は無謀ではないか、2カ月にしてはどうか、とアドバイスがあったという。しかし、プロジェクトには、これ以上は待てないという事情があった。廃車解体の期限があったからだ。プロジェクトが引き取らなければ、711系電車は文字通り鉄くずとして処分されてしまう。
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