配達の“遅れ”が少なくなる? 佐川急便の数年後:水曜インタビュー劇場(物流公演)(3/6 ページ)
佐川急便は2014年の春から、ビッグデータを本格的に稼働させている。特に「品質」と「実績」に注目しているというが、どういう意味なのか。IT部門を担当している部長に話を聞いたところ……数年後の姿が見えてきた!?
本部と営業所が情報を共有化
丸山: はい。ただ、誤解していただきたくないことは「ドライバーAさんの能力が劣っている」ことを見つけるのが目的ではありません。普通に朝、ドライバーが荷物を持って出たのに、時間通りに配達できなければなんらかの事情がある。ひょっとしたら荷物が多くてその人のキャパ(能力)を超えているのかもしれない。そうであれば、もう1人追加しなければいけません。そんな判断がすぐにできるようになりました。
宅配業者の忙しい時期は、年末と年度末。ピークが終わってから手を打っても仕方がないんですよね。問題を見つけてすぐに手を打たなければ、お客さんにご迷惑をかけてしまうので。
土肥: 「その人のキャパを超えているかもしれない」という話をされましたが、人員不足のほかにどういったことが考えられるのでしょうか?
丸山: 新人で能力がまだ低いということであれば、比較的楽なエリアを担当させて、ベテランには忙しいエリアを担当してもらう。このほか、軽トラックの場合、小さな荷物をたくさん運ぶのですが、それで遅れが生じていれば、大きな荷物を載せる大型トラックを担当してもらうこともあります。量の調整または人の調整によって、問題を解決するといった形ですね。
土肥: お客さんからの声とか、誰が時間を守れていないとか、どの営業所がとか……さまざまな情報が明確になったわけですが、ここで重要なことは本部と営業所が情報を共有化できていることでしょうか?
丸山: ですね。以前であれば、現場の人たちは自分たちの課題は分かっていても、本部からまたは営業所から見ればよく分かりませんでした。いまはそれが分かるようになったので、「このエリアを担当しているAさんは大丈夫ですか?」ということが指摘できて、どのように対応すればいいのかといったスピードが速くなりました。
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