配達の“遅れ”が少なくなる? 佐川急便の数年後:水曜インタビュー劇場(物流公演)(4/6 ページ)
佐川急便は2014年の春から、ビッグデータを本格的に稼働させている。特に「品質」と「実績」に注目しているというが、どういう意味なのか。IT部門を担当している部長に話を聞いたところ……数年後の姿が見えてきた!?
「実績」の意味
土肥: 「品質」のことだけでなく、もうひとつの「実績」についても話を聞かせてください。
丸山: これまで配達員が所有している端末でバーコードを読み込み、誰が集荷したのか、誰が配達したのか、どこを経由したのか、といった情報は分かっていました。今ではこの膨大なデータを瞬時に分析できるようになったので、どこにどれだけのコストがかかっているのかも明らかになってきました。
例えば、ある営業所で1日に預かった荷物に対する運賃は、コストと見合っているのかどうか。同じ規模の荷物を扱う営業所が2つあって、ひとつはコストが安いのに、もうひとつはコストが高い。なぜこうしたことが起きているのか、といったことがすぐに分かるようになりました。
土肥: 原価分析はビッグデータ導入前にも把握していましたよね。
丸山: はい。しかしものすごく時間がかかっていました。1日のことを調べるのに、1日半かかるといった感じ(苦笑)。今では想定コストを入力しながら分析できるので、仮説を立てながらどういった手を打てるのかを議論することができるようになりました。
あと、配達効率がいいと思っていたエリアが実は悪かったり、逆に配達効率が悪いと思っていたエリアが実は良かった、といったケースもありました。
土肥: 一般的には「都市=効率がいい」「地方=効率が悪い」ですよね。
丸山: はい。ただ、すべてのエリアがそうとは言い切れません。なぜ例外が生じるかというと、まだ「理由はこれだ!」と断言できないのですが、密集地域は他社も配達しているので、より優秀な人材を確保するために高い給料を設定しています。
土肥: じゃあ、その人の給料を安くする……。
丸山: といった話ではありません(苦笑)。どういった改善ができるのかがより具体的になったという話です。
土肥: 一方、予想と違って効率がよかった地域のことも聞かせてください。
丸山: 住宅が密集している地域では、クルマを発進させたり、止まったりすることが多いので、燃費が悪い。しかし、密集していない地域では、そうしたことを何度も何度も繰り返さないので、燃費が良いんですよね。渋滞があまり発生しないので、スムースに回れる。一方、密集地域は不在率も高いので、同じように配達していても効率が悪い。もちろんこうしたことは分かっていましたが、これからはさらに詳しい数字を把握できるようになるので、課題に対応しなければいけません。
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