配達の“遅れ”が少なくなる? 佐川急便の数年後:水曜インタビュー劇場(物流公演)(5/6 ページ)
佐川急便は2014年の春から、ビッグデータを本格的に稼働させている。特に「品質」と「実績」に注目しているというが、どういう意味なのか。IT部門を担当している部長に話を聞いたところ……数年後の姿が見えてきた!?
配達時間の遅れは少なくなる!?
土肥: 数年先の話も聞かせてください。ビッグデータが導入されることで、配達時間の遅れは少なくなるのでしょうか?
丸山: ある荷物の配達時間が「18〜20時」と設定されている場合、18時30分になっても配達されていなければメールが届くようになっています。「大丈夫ですか?」といった内容で。ビッグデータをうまく活用すれば、ドライバーの動きをチェックして、17時の段階で「あなたの今日の配達状況だと、『18〜20時』の間に荷物を配達できなくなるかもしれません。大丈夫ですか?」といったアラートを通知することができるようになるかもしれません。
土肥: そうしたメールが届いたら、ドライバーはどのような対応が考えられるのでしょうか?
丸山: その荷物のことを忘れていたら、他の荷物の状況などを考えながらルートを組み直さなければいけません。事前のアラートが遅くなればなるほど、ルートの組み直しが難しくなる。なのでできるだけ早く動きを予測して、アラートメールを送ることができないか、いま検討段階です。
土肥: ルートの組み直しは、現場のドライバーがされるのですか? そうであれば、ベテランのほうが効率よく配達することができますね。
丸山: ベテランと新人がいたときに、1日に配達できる個数は違ってきます。一般的にベテランのほうが多い。なぜ多いのかというと、いろいろなことを経験しているので知識が豊富なことが大きいんですよ。どういう順番で回ればいいのか、どこにクルマを止めて配達すればいいのか、この家は何時ごろにいけば在宅している確率が高いのかといったことを把握しています。こうしたベテランの情報を分析することで、本部または営業所から指示ができるようになれば、新人でもベテランに近い作業ができるようになるかもしれません。
土肥: なるほど。
丸山: 以上のことは社内の話ですが、データを分析することで社外にも提供できるかなあと思っています。
土肥: どういう意味でしょうか?
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